2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580239
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山崎 亮一 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (10305906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 光一 信州大学, 農学部, 教授 (60244836)
平野 信行 東京農工大学, 中央農業総合研究センター, チーム長 (10355464)
細山 隆夫 東京農工大学, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (50526944)
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Keywords | 失業 / 農業構造 / セーフティーネット / 長野県上伊那地方 / 派遣従業員 / 水稲作 / 労働市場 / 農地賃貸借 |
Research Abstract |
平成22年度は長野県上伊那地方を対象としながら、地域労働市場と農業構造の変化を特徴づけた。すなわち、同地方を対象として1993年に実施した調査の結果と、2009-11年のそれとを比較考察した。そこから以下の諸点が明らかとなった。第1に、近年、農外企業は、不況下の雇用調整を、主に派遣従業員の解雇で行っている。第2に、しかし、農家構成員の就業動向を見ると、不況下の雇用調整の対象となった者は若干名にとどまり、企業動向から明らかになった従業員の激しい流動性とはズレがあった。近年の農家構成員の農外における就業動向を特徴づけているのは、むしろ、高齢者の農外就業の増加であった。第3に、農業構造の動態変動として指摘すべきは、先ず、かつては農地の受け手及び複合化の担い手であった上層農の、この間の崩落である。つまり上層農は借地を放出して水稲単作化しているのであって、かつての上層の中間層化が進んでいる。また、その一方で、かつての零細層による、貸付地の自作化による規模拡大の動きも、そこにおける定年帰農の動きとからみ進んでいる。つまり、かつての零細層の中間層化もまた進んでいる。こうした2面的な動きの合成的結果は中間層の肥大化である。これは、上層の後退を零細層が補って地域全体の農地をある程度保全しているということでもある。第4に、しかし、こういった形の農地の保全には限界がある。新規就農者がリンゴ団地を引き受ける動きもあり、それが農地保全にある程度寄与しているが、全体としては急速な農地減少に歯止めがかかってない。第5に、中間層の肥大化は、中間層を支え、そして同時に中間層が担う組織である、集団耕作組合の「発展」をもたらしている。確かに、集団耕作組合の利用面積は一次期の停滞を脱してこの間に増加している。しかし、それは農機の使い勝手をよくすることによってである。したがって、中間層の脱農化もまた進んでいる。
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