2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580239
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山崎 亮一 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (10305906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 光一 信州大学, 農学部, 教授 (60244836)
平野 信行 中央農業総合研究センター, 主任研究員 (10355464)
細山 隆夫 北海道農業研究センター, 主任研究員 (50526944)
新井 祥穂 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 助教 (40345062)
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Keywords | 失業 / 農業構造 / セーフティーネット / 不況 / 離農 / 水稲作 / 労働市場 / 農地賃貸借 |
Research Abstract |
平成23年度は北海道石狩川下流域に位置する水稲単作地域の岩見沢市(旧北村)を対象としながら、地域労働市場と農業構造の変化を特徴づけた。すなわち、同市S集落の全農家20戸を対象として2002年に実施した聞取り調査の結果と、2011年の同様の調査とを比較考察して、この間の変化を考察した。そこから以下の諸点が明らかとなった。第1に、2002年に集落内に存在していた農家のうち、かつて5ha以下の比較的小面積の農地を保有していた農家を中心に5戸が、2011年までの9年間に離農していた。この5戸のうち、2戸が在村離農、3戸が離村離農であった。第2に、こうして離農する家があった一方で、離農家が放出する農地を購入して、9年間にそれぞれが10ha程度の面積を増やして合計20ha以上の農地規模になるような、急速に規模拡大する農家が4戸、地域の農業構造変動の他方の極には存在していた。そして第3に、本研究課題との関連で特に注目すべきは、2002年時点では4.7haと、地域内では比較的面積規模の小さい水稲作経営で、加えて世帯主が農外で土木作業員として年間200万円程度の収入をあげていた一兼業農家が、この間の不況の影響を受けて土木作業員としての仕事が減少してきて農外収入が減少する中で、他方では農地をこの間に4ha程度購入して農業の規模拡大を進めていたことである。つまり農外の不況が、一部の兼業農家の農業への傾斜を促してきたわけである。第4に、ところでこうした面積規模の拡大の動きが地域内で存在する一方で、別の専業的な農家には集約的な経営展開の動きも見られ注目された。それは、3戸の農家における大豆種子の生産への着手である。こういった農家はかつての10ha程度の規模を2011年に至ってもほぼそのまま維持しながら規模拡大せず、こういった集約的な方向に展開してきたのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(H22)には長野県上伊那地方を対象とした実態調査を行った。また、2年度目(H23)には、北海道石狩川下流域地方を対象とした実態調査を行った。そして、これらの実態調査で得たデータを分析した結果を、論文や学会報告の形で公表してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間に行った2つの実態調査と、それらに基づいた分析の結果をふまえて、総括的な考察を行う。なお、本研究課題では、今まで調査対象地としてきた長野県上伊那地方と北海道石狩川下流域地方の他に、岩手県三陸地方を対象とした実態調査研究を行うことを予定していた。しかし、これを実施することは、昨年度の東日本大震災後の情報をふまえて、再考を余儀なくされている。そのため、本年度は、比較対象のために海外調査地を設定することをも含めて、代替的な調査研究対象地を選定する可能性がある。
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