2011 Fiscal Year Annual Research Report
食料問題解消後の中国における穀物需給調整システムに関する研究
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22580262
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
菅沼 圭輔 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (50222047)
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Keywords | 農業経済学 / 中国 / 食料問題 / 価格支持政策 / 食糧直接補助 |
Research Abstract |
平成23年度は、研究計画に沿って第1に中国の揚子江以南の稲作地域の浙江省を取り上げて、兼業深化地域においても地域自給主義的な稲作保護政策が採用されていることを明らかにした。 まず、政策文献の整理を行い、2008年の農業政策において、技術革新・生産の合理化推進を前提に、消費地でも食糧作付面積を維持し、現有の自給率を低下させないことが提起されたことを明らかにした。次いで、資料分析により、近年では、移入に依存する都市的な地域での食糧生産の比較優位低下の問題よりも全国市場・国際市場での調達・調整リスクを重視して食糧生産の維持のために、財政支援を通じて家族経営から企業的農場経営への急速な移行が進展していること明らかにした。 具体的には、様々な財政支援が、(1)生産資材価格の高騰、(2)耕地利用料金の上昇、(3)製造業に影響された賃金水準の上昇の影響を軽減することで、比較優位の小さい食糧生産の持続性を支えていることを明らかにした。 第2に平成22年度に十分に行えなかった、トウモロコシ主産地である吉林省の調査を行った。そして、政府の備蓄食糧積み増しの方法で、産地市場に介入することで、価格を下支えしていることが、産地における飼料加工・工業用でんぷん加工企業の経営を圧迫していることが明らかになり、平成22年度に分析した小麦産地と類似した現象が起きていることが分かった。ただ、吉林省では飼料用専用品種の普及を試みたが、末端市場において普通品種との差別化が図られていないため、普及に失敗していることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度に実施予定であったトウモロコシ主産地におけるレビューは、平成23年度に実施することができた。ただ、稲作地域については、受け入れ先の対応により計画通りいかない部分があるため、平成23年度では稲作地域のレビューが行えなかった。その他の点では計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成24年度には、平成23年度には文献調査のみにとどまった浙江省・慈渓市において現地行政機関などへのレビューを実施する予定である。 また、これまでの現地でのレビューを踏まえて、政府の市場介入の市場価格変動や産地の農業構造調整への影響について総括的な分析を行う予定である。ただ、統計データの入手については、現地行政機関の協力が得にくいため時期を限定して定量的な分析を行うか、定性的な分析によって補完するかを判断したい。
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Research Products
(2 results)