2011 Fiscal Year Annual Research Report
食料輸出国による農業保護の総合的評価と国際市場の攪乱要因に関する計量経済学的研究
Project/Area Number |
22580265
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 弘明 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 教授 (70329019)
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Keywords | 農産物貿易 / 食料輸出国 / 農業保護政策 / タイの所得保証政策 |
Research Abstract |
国際農産物需給への影響という視点からタイの農業支持政策の方向性を考察し、(1)2000年代に入ってから、農家への出来秋の資金提供を主要な目的としたかつての担保融資制度が、支持価格による政府買い入れという市場介入を伴う生産者保護的な性格を強めたこと、(2)2008年12月の政権交代に伴って、同制度は2009/10年産から、不足払い政策に分類される農家所得保証政策と呼ばれる制度に置き換わったこと、(3)農家所得保証政策における保証基準価格は歴史的に見られた市場価格よりもかなり高く設定され、膨大な財政負担を生んだこと、(4)2011年8月の再度の政権交代により、一段と高められた融資単価のもと担保融資制度が復活したこと、(5)特にWTO上での国際関係として、以上の政策による輸出補助金相当量が相当金額にのぼる点、などについて考察した。ここ10数年の動きをやや長期的な視点から見ると、政権交代や頻発する政治的混乱にもかかわらず、タイの農業政策はほぼ一貫して生産者保護的な性格を強めつつあるといえる。タイの農政はもはや経済政策の範疇を超え、政策としての持続可能性に疑問を持たざるを得ない状況に思える。またバイオ燃料の振興策を含むアメリカによる総体としての農業保護の程度は、小売段階の自動車燃料に対するガロン当たり補助金を計上するだけで、2008年の300億ドル弱からから、2022年にはおそらく500億ドルほどに増加することが予想される。これはOECDが報告する農業保護係数であるPSE値の2倍程度である。しかし一般的な状況として、バイオ燃料推進策には混合規制などの数量規制があり、原料である農産物価格を支持する程度を定量的に捉えることの理論的な問題点を明らかにすることはなお残された課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
もともと難しい問題にチャレンジする研究課題であり、目標として設定した達成目標が過大であったかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで以上に精進する。
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