Research Abstract |
ベトナム中部に位置するテユア・ティエン・フエ省は,フエ市を中心に農業近代化,都市化が急速に進行している.同省最大河川のフォーン川はラオス側山岳地帯から太平洋沿いのタムジャンラグーンに向かって注いでおり,上流では洪水調節,水力発電,灌漑等を目的とした大規模ダム建設が進んでいる.そこで我々は,同地域における農業の近代化,都市化,ダム建設などが河川およびラグーンの水質に及ぼす影響を解明する研究に着手した.2010年度は,プランテーション地帯,水田地帯,フエ市街,フエ市下流ラグーン流入地帯,ラグーン内において水質モニタリングを開始した.また,気象,河川流量などの関連データを収集するとともに,GPS(全地球測位システム)を用いた流況調査を行った.さらに,これまでに現地で行われてきた河川流量観測および水質モニタリングに関して文献および聞き取り調査を行った. 河川,ラグーンの水質概況調査では,市街地では全窒素(数~15mg/L),全リン濃度(0.1~1.6mg/L)の高い地点が認められた.また,水田地域においては全窒素濃度が1~4mg/Lであり,施肥窒素の流出が考えられる.また,ラグーン域の濃度は上流よりも高く,市内や農地からの負荷が影響していると思われた. 現地では,既設および建設中のダムによる流況変化が環境に及ぼす影響が懸念されていること,また,ダムによる効率的な洪水制御について関心が高いことなどから,フォーン川流域の気象,流量,水質などの調査が継続的に行われていることがわかった. 以上のように,フォーン川流域における河川,ラグーンの水質概況調査では,市街地および農地周辺では窒素,リン濃度の高い地点が認められた.また,これまでに現地研究者が蓄積した流量,水質データを入手した.今後は,経済発展に伴う流域状況の変化とそれに応じた水質変化を明らかにする予定である.
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