Research Abstract |
ベトナム中部に位置するテュア・ティエン・フェ省は,フエ市を中心に農業近代化,都市化が急速に進行している.同省最大河川のフォーン川はラオス側山岳地帯から太平洋沿いのタムジャンラグーンに向かって注いでおり,上流では洪水調節,水力発電,灌概等を目的とした大規模ダム建設が進んでいる.本年度は,プランテーション地帯,水田地帯,フエ市街,フエ市下流ラグーン流入地帯,ラグーン内における水質モニタリングに加えて,河川水位の観測を行った.また,日雨量データを基にタンクモデルを用いて流量時系列を発生させ,これと水質観測データとに基づいて得られたL-Q式を適用して,無機態窒素濃度の季節的変化を推定した. フォーン川水系の水質調査では,雨季,乾季を問わず,市街地支流において窒素,リン濃度が高いことがわかった.雨季には水位が3m近く上昇し,市街地では洪水が発生した.また,ラグーン内の準集約的および粗放的エビ養殖では栄養塩インプットが大きく異なるにもかかわらず,底質の物理化学特性に有意な違いが認められなかった. タンクモデルによる計算流量と現地観測データから得られたL-Q式に基づいて,無機態窒素負荷量の季節的変化を推定したところ,市街地の下流では,上流よりも無機態窒素負荷量が年間を通して高かった.このことは,市街地からの無機態窒素の負荷がフォーン川の水質に大きな影響を与えていることを示している. 以上のように,フォーン川流域では,市街地からの栄養塩負荷が大きいことがわかった.今後は,経済発展に伴う流域状況の変化とそれに応じた水質変化を明らかにする予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定期的な水質モニタリングにより,フォーン川水系の水質の現況が明らかにされつつあり,また,限られた水文水質データを用いて同水系における水質の季節変動を定量的に把握しつつある。
|