Research Abstract |
大腸菌とその牛乳IgG分画を含む飼料でマウスを飼育すると,免疫グロブリンの産生に必要なたんぱく質の遺伝子発現が免疫グロブリンの産生抑制方向に動くだけではなく,IgEレセプターの合成に関係する遺伝子の発現も抑制されることを,申請者は見出した(Sueda Y & Otani H. Milchwissenschaft, 64,354-357,2009)。そこで,この発見に基づき,食経験のある微生物,とくにビール酵母とその牛乳IgGを原料にしてI型アレルギー軽減食品を開発するという構想から実験を行った。 まず,平成22年度は,ビール酵母を免疫した妊娠牛のミルクから,IgG分画を精製した。次いで、その分画には,ビール酵母に特異的なIgGが含まれることを確認した。 一方、BALB/cマウスを免疫に用いたビール酵母,ビール酵母に特異的な抗体を含む牛乳IgG分画,およびそれらビール酵母と牛乳IgG分画を含む飼料で飼育しながら,それらのマウスにダニアレルギーを誘導した。その結果,ビール酵母とそれに特異的な抗体を含む牛乳IgG分画を添加した飼料での飼育において,I型ダニアレルギーの発症は,ビール酵母やそれに特異的な抗体を含む牛乳IgG分画を全く含まない飼料や,それらのどちらかを含む飼料での飼育の場合よりも,顕著に軽減することが観察された。また,ビール酵母とそれに特異的な抗体を含む半乳IgG分画を含む飼料での飼育により,I型アレルギーの発症と関係する免疫因子の産生や発現が,ビール酵母やそれに特異的な抗体を含む牛乳IgG分画を全く含まない飼料や,それらのどちらかを含む飼料での飼育の場合よりも,顕著に低下することが示された。 以上の結果から,食経験のあるビール酵母と,それに特異的な抗体を含む牛乳IgG分画添加飼料での飼育により,マウスにおいてはI型アレルギー症状が軽減されることが明らかになった。
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