Research Abstract |
平成22年度は,BALB/cマウスを免疫に用いたビール酵母,ビール酵母に特異的な牛乳IgG,およびそれらビール酵母と牛乳IgGを含む飼料で飼育しながら,ダニアレルギーを誘導したところ,ビール酵母とそれに特異的な牛乳IgGを含む飼料での飼育においてのみ,ダニアレルギーの症状が有意に軽減することを観察した。このことは,ビール酵母とそれに特異的な牛乳IgGを同時に摂取すると後天的I型アレルギーが軽減することを示している。 そこで平成23年度は,遺伝的にI型アレルギーを自然発症するNC/Ngaマウスを,ビール酵母単独添加飼料,ビール酵母に特異的な牛乳IgG添加飼料,およびそれらビール酵母と牛乳IgGの双方を添加した飼料で飼育し,アレルギー症状,免疫細胞数およびアレルギーに関係するたんぱく質の遺伝子発現を調べた。また,マウスパイエル板細胞培養系を用いて,ビール酵母とその牛乳IgGによるI型アレルギー軽減メカニズムを検討した。 その結果,まず,ビール酵母とそれに特異的な牛乳IgGを添加した飼料での飼育においてのみ,I型アレルギー症状が有意に軽減することが示され,IgE産生細胞数や高親和性IgE受容体発現肥満細胞数の減少,肥満細胞の脱顆粒時にCaセンサーとして不可欠なSTIM1のmRNA発現が有意に低下することが示された。そこで,パイエル板細胞培養系を用いて脱顆粒に関係するたんぱく質であるSTIM1、ITKおよびBTKのmRNA発現を調べたところ,ビール酵母とそれに特異的な牛乳IgGを添加すると,それらのいずれの発現も抑制されることが示された。 以上のことから,ビール酵母とその牛乳IgGは肥満細胞の脱顆粒を抑制することによりI型アレルギーを軽減すると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビール酵母とそれに対する牛乳抗体(とくにIgGクラス)を含む飼料でのアレルギーモデルマウスの飼育により,先天的(遺伝的)および後天的I型アレルギー症状はともに軽減することを確認したこと,並びにその軽減メカニズムは当初Th1細胞とTh2細胞バランスの改善によるためと考えていたが,肥満細胞レベルで生じていると言うことを示す新知見を得たことにより実験は順調に進展していると考える。しかし,口頭発表のみで,論文として公表出来ておらず,現在,論文作成中であることから「おおむね」と判断した。
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