2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子多型選抜と生殖細胞機能賦活化を併用する優良家畜生産手法の構築
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22580316
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松本 浩道 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70241552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉澤 緑 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60114162)
福井 えみ子 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20208341)
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Keywords | 受胎率 / 着床率 / 遺伝子多型 / 胚発生 / 妊娠 |
Research Abstract |
生産性に関わる遺伝子の解析 ヒトBRCA1は、家族性乳ガンに関与していることが知られている。そこで我々は、BRCA1がウシの乳房性疾患に関与している、と仮説をたてた。黒毛和種およびホルスタイン種において得られたBRCA1遺伝子エキソン11の塩基配列およびアミノ酸配列を既報のヘレフォード種と比較したところ、総塩基数および総アミノ酸数は一致していた。また、確認されたアミノ酸置換は同義置換であったことから、ウシBRCA1エキソン11のアミノ酸配列は、3品種間で高く保存されており、重要な機能を有していることが示唆された。ホルスタイン種リピートブリーダー4頭におけるBRCA1遺伝子エキソン11の塩基置換は、経産雌ウシと比較して遺伝子型に特徴は見られなかった。さらに、エキソン11における核局在化シグナルおよび疾患関連性変異の部位での塩基置換は認められなかった。 発生と着床能力獲得に関する分子機構 マウス胚におけるBrca1とその関連因子の発現解析を中心に行った。Brca1タンパク質は、胚盤胞において子宮内膜に着床する部位である栄養外胚葉に発現していた。この発現は、着床を誘起された胚で上昇していた。この着床周辺期胚におけるBrca1は、着床前胚盤胞の着床能力の獲得においてエストロゲンの作用後に発現が上方制御され、Bard1とは独立して着床期胚および2倍体栄養外胚葉の細胞増殖および分化抑制に機能するとともに、着床後の栄養膜巨細胞への分化に間接的に関与していることが示唆された。着床周辺期胚におけるERαは、着床能力の獲得において発現が上昇するが、その後ユビキチン化によるタンパク質分解によって速やかに分解されることで、過剰なエストロゲンの作用を回避していることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子解析については、黒毛和種およびホルスタイン種におけるBRCA1遺伝子エキソン11の塩基配列を決定することができた。また、ホルスタイン種のリピートブリーダーと比較し、経済形質との関連を探るところまで達した。胚の着床能力解析においては、マウス胚におけるBrca1とその関連因子の作用機序の一端を明らかにするに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子解析の結果、ウシにおけるBRCA1遺伝子エキソン11の塩基配列は保存性が高いことが明らかになってきた。そこで今後は、ヱキソン11以外の解析を行い、BRCA1遺伝子の全塩基配列の決定を行なう方針である。また、ホルスタインと黒毛和種の優良家系とBRCA1遺伝子多型が関与しているかを解析する。 マウス胚における着床能力獲得機構の解析の結果、Brca1はエストロゲンによって発現が上方制御され、栄養外胚葉の細胞増殖および分化抑制に機能する一方で、ERα分解によって過剰なエストロゲン作用を回避していることが考えられた。体外受精で得られた胚盤胞におけるこの作用機序を解析し、着床能力の改善に研究を展開する予定である。
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