2011 Fiscal Year Annual Research Report
完全合成培地を用いたブタ体外成熟卵子の成熟機構の解明と胚の体外生産技術の向上
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22580324
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉岡 耕治 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・病態研究領域, 上席研究員 (20355192)
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Keywords | 応用動物 / 発生・分化 / 卵子成熟 |
Research Abstract |
ブタにおける胚の体外生産技術の高度利用のため、成分既知体外成熟培地(POM)を用いて、卵子の細胞質成熟と卵丘細胞の膨化に関与する因子の同定と機能解析を行い、卵細胞質成熟の改善と多精子受精率の低減による高品質体外生産胚の作出技術を開発する。 まず、卵胞刺激ホルモン(FSH)、上皮成長因子(EGF)様成長因子の一つであるトランスフォーミング増殖因子(TGF)-αおよびブタ卵胞液が体外成熟培養における卵丘細胞の膨化に関わる因子の遺伝子発現に及ぼす影響を解析するため、卵丘卵子複合体(COCs)は、rhFSHとTGF-αの一方あるいは両方を含むPOMで培養し、卵丘膨化関連因子mRNA量を定量RT-PCR法により測定した。ヒアルロナン合成酵素2、ヒアルロナン結合タンパク質であるヒアルロナンプロテオグリカン結合連結タンパク質(HAPLN-1)およびバーシカン(VCAN)のmRNA量は、rhFSHあるいはTGF-α添加により無添加に比べ有意に増加したことから、ブタ体外成熟培地へのrhFSHあるいはTGF-α添加は、ヒアルロナン関連因子の遺伝子発現を変化させることが明らかとなった。 ついで、体外成熟培地へのrhHAPLN-1あるいはrhVCANの添加がCOCsの面積変化、体外受精および体外発生能へ及ぼす影響について調べた。rhHAPLN-1あるいはrhVCANをPOMに添加した場合、COCsの面積は無添加と比べ有意に増加した。しかし、rhHAPLN-1あるいはrhVCANをPOMに添加して体外成熟した卵子を体外受精・体外培養したところ、体外受精率、胚盤胞への発生率および胚盤胞の細胞数は、無添加と比べ差を認めなかった。以上から、FSHおよびTGF-αにより誘導されるヒアルロナン結合タンパク質は、体外成熟における卵丘細胞の膨化を促進することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画の通り、HAPLN-1およびVCANを用いて、成分既知完全合成培地によるブタ卵子の体外成熟培養における卵丘細胞の膨化、体外受精後の受精率、胚発生率に及ぼす効果について検討し、それらがFSHおよびTGF-αにより誘導され、卵丘細胞の膨化に関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
HAPLN-1およびVCAN単独では体外受精能や胚発生能に明らかな効果は認められなかったため、これら因子間あるいは他の因子を含めた因子間の相乗効果について検討することで、ブタ体外成熟卵子の成熟機構を精査し、ブタ胚の体外生産技術の改善を図る。
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