2011 Fiscal Year Annual Research Report
染色体脆弱部位に存在する腫瘍抑制因子WWOXの神経および内分泌機能に関する研究
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22580341
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
鈴木 浩悦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50277662)
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Keywords | 神経 / 内分泌 / 腫瘍抑制因子 / 染色体脆弱部 / ラット |
Research Abstract |
本研究は腫瘍抑制因子WWOX(WW domain containing oxidoreductase)を遺伝的に欠損するlde/ldeラットを用いて、WWOXの生理機能を明らかにすることを目的としている。lde/ldeラットは、生後の重篤な矮小、聴原性てんかん発作、歩行異常、海馬CA1領域における空胞、精巣の発達異常を呈する自然発症の突然変異体である。これらの多面的異常は、染色体脆弱部位に位置し、腫瘍抑制因子と考えられるWwoxの機能喪失型変異に起因する。Wwoxは神経系と内分泌系に広範に発現するが、その生理機能はよく分かっていない。Wwoxのノックアウトマウスは、lde/ldeラットと同様に矮小を示すが、2~3週齢で全て死亡するため、てんかんや脳神経系の病変の有無と性成熟期の内分泌動態に関しては報告されていない。そこで、本研究では、lde/ldeラットの脳や他の臓器の病理発生、内分泌ホルモン動態、腫瘍発生の有無を22から24年度の3年間に渡って調査する。22年度は生後初期のラットから血漿を採取保存すると共に、発症ラットの脳組織検索により海馬の空胞変性が日齢に伴って重篤化し、海馬、大脳皮質、脳幹などにおいてニューロン数が減少していることを見出した。23年度も生後初期ラットからの試料採取を継続すると共に、ホルモンアッセイの条件検討を行った。生化学検査では、幼弱発症ラットで尿素窒素とクレアチニンが高値で腎機能低下が示唆された。WWOXタンパク質の発現は、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓、精巣などの広範な臓器で認められ、特に肝臓と腎臓において発現レベルが高く、これらの臓器で何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆された。脳での発現解析ではWWOXが大脳皮質、海馬、脳幹、小脳、橋などに発現し、特に脳幹、小脳、橋において高い発現を示した。免疫組織化学でWWOXはニューロンの細胞体に検出された。肉眼解剖およびMRI検査で発症ラットの脳は低形成を示さないが、脳室領域は逆に減少し,浮腫様に大きさが増大していた。また、ヘテロ接合のラットを1年以上長期飼育し腫瘍発生の有無を調べたが、腫瘍発生の増加は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既に採取した試料で内分泌ホルモンの検討を行う予定であったが、当初予定していた、使用経験のあるアッセイキットが販売停止となり、他社のキットを使用する必要が生じたため、条件検討を行った。また、学内事情により研究室と動物室を移転する必要性が生じ、一時的に動物飼育を外部委託したため、動物のサンプル採取が全体として遅れた。これらの理由により、内分泌ホルモンの検討は24年度に持ち越された。
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Strategy for Future Research Activity |
教室の移転に伴って縮小化した動物の生産体制も以前の状況にほぼ改善したので、サンプリングを継続する予定である。また、ホルモンアッセイキットにおいて良好な結果が得られない可能性を考慮して、内分泌組織に関して免疫染色とプロッティングによりWWOXと共に各種ホルモンの産生状態を調査する予定である。
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Research Products
(7 results)