2011 Fiscal Year Annual Research Report
ネコ伝染性腹膜炎ウイルス複製過程におけるサイクロフィリンの機能解析
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22580343
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
田中 良和 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50291159)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / サイクロフィリン |
Research Abstract |
ネコのウイルス感染症のうち,ネコ伝染性腹膜炎(FIP)はワクチン開発が未だ成功しておらず,効果的な治療法も確立されていない疾患で,一度発症すると致死的な経過をたどる。このため,ウイルス複製制御因子を同定・解析し,病原性発現機構を明らかにすることが切望されている。 申請者は,免疫抑制剤サイクロスポリンA(CsA)がFIPウイルス(FIPV)のゲノム複製と転写を強力に阻害することを発見した。前年度において,CsAと結合する細胞内サイクロフィリン(Cyp)がFIPVの増殖を促進することを明らかにし,FIPVのN蛋白質との共免疫沈降実験の結果からCypB蛋白質と特異的に結合することがわかった。このため,CypB遺伝子発現のノックダウン細胞を作成し,FIPVを感染させた結果,FIPVのウイルス複製を有意に阻害することを認めた。さらにこのノックダウン細胞にCypB遺伝子を導入することで遺伝子発現を回復したリバータント細胞を作成しFIPウイルスを感染させた結果,ウェスタンブロット法,リアルタイムPCR法,ウイルス感染価測定法,いずれにおいてもウイルス増殖効率が回復した。これらの結果から,CypB蛋白質がFIPVの増殖に関与していることが明らかとなった。今後,CypBの遺伝子欠失変異体を作成し,どの領域がウイルス増殖に関与しているか,さらに解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サイクロスポリンAによるFIPVの増殖抑制効果においてCypBが関与することを世界的に初めて発見し,その作用機序を明らかにすることで社会的あるいは獣医領域において貢献できたため。しかしながら,さらなる詳細な分子機構を解明する必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,ウイルス増殖に係わるCyp8の領域を決定すると共に他の細胞因子がいかに関係しているのかを詳細に解析する必要性がある。 また,感染ネコを用いた実験において副作用をモニターリングしながらCsAの薬効評価を行っていかなければならない。さらにCsAのアナログを用いた実験系あるいは他の薬剤やインターフェロンとの併用によるウイルス増殖抑制効果の検討をおこなう。
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