2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウシの黄色ブドウ球菌性乳房炎における好中球介在性炎症増幅機構の役割
Project/Area Number |
22580347
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡部 淳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所環境・常在疾病研究チーム, 主任研究員 (60442810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 英司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 細菌・寄生虫病研究チーム, 主任研究員
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Keywords | 乳牛 / 乳房炎 / 黄色ブドウ球菌 / 好中球 / エラスターゼ / インターロイキン-8 / ラクトフェリン由来ペプチド |
Research Abstract |
乳房炎は酪農経営に最も大きな経済的損害を与える疾病の一つであり、黄色ブドウ球菌は牛乳房炎の主要な原因菌の一つである。黄色ブドウ球菌による牛の乳房炎は慢性期に進行した場合、その治癒は極めて困難となる。よって予後診断を行うためには炎症フェーズの判定が重要である。しかし乾乳期における黄色ブドウ球菌性乳房炎について、炎症フェーズを判定するために必要な病態生理学的特徴は十分に解明されていない。本研究では炎症フェーズを判定する指標の候補として顆粒球(好中球)、インターロイキン-8(IL-8)、好中球エラスターゼ、22および23kDaのラクトフェリン由来ペプチド(ラクトフェリンのエラスターゼによる分解によって生じる)に着目し、牛の黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎病態モデルについてそれらの乳汁中動態を調査した。好中球数はブリード氏法およびサイトスピン標本の顕微鏡観察の組み合わせで、IL-8濃度は新規に開発したELISAで、エラスターゼ活性はザイモグラフィーで、ラクトフェリン由来ペプチド濃度は定量的免疫ブロット法で測定した。結果として、好中球数は当該乳房炎の急性期から増加し、IL-8、好中球エラスターゼ、22および23kDaラクトフェリン由来ペプチドの乳汁中濃度は亜急性期から慢性期にかけて著しく増加することが示された。よって好中球エラスターゼおよび22および23kDaラクトフェリン由来ペプチドの乳汁中濃度は、牛の黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎において、炎症フェーズが亜急性期以上に進行していることの指標となりうることを示した。
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