2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウシの黄色ブドウ球菌性乳房炎における好中球介在性炎症増幅機構の役割
Project/Area Number |
22580347
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡部 淳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・寒地酪農衛生研究領域, 主任研究員 (60442810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 英司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・寒地酪農衛生研究領域, 主任研究員
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Keywords | 獣医学 / 感染症 / 免疫学 / 生体分子 / 動物 |
Research Abstract |
黄色ブドウ球菌性乳房炎の炎症フェーズを判定することは予後診断に重要である。本研究では当該乳房炎の予後診断に有用な病態生理学的特徴をつかむことが目的の一つである。 本年度は組換え牛インターロイキン(IL)-8を乾乳時の牛乳槽内に投与して誘発した乳房炎について、乳汁中の好中球エラスターゼ活性、催炎性ラクトフェリン(Lf)由来ペプチド(エラスターゼによるLf分解産物の一種)およびIL-8濃度を調査し、昨年度調査した黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の場合と比較した。臨床型乳房炎を発症した牛では黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎と同様、乳汁中に著しい好中球浸潤および乳凝固物が認められ、持続的な好中球エラスターゼ活性、催炎性Lf由来ペプチドおよびIL-8濃度の増加がみられた。以上からIL-8は連鎖的な炎症反応(IL-8濃度増加→好中球の浸潤、活性化→エラスターゼ放出→Lfの分解、催炎性ペプチドの放出→乳腺上皮におけるIL-8産生増加(次の連鎖反応へ))を引き起こすこと、この連鎖反応は黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の亜急性期~慢性期の病態進行に深く関わることが示唆された。組織化学的検査により、乳凝固物中に細胞外トラップ構造が誘導されることが示された。また黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎について、乳汁中の形質転換成長因子(TGF)濃度を調査し、炎症の急性期~亜急性期に低下したTGF-β2濃度が慢性期に再び増加することを明らかにした。 これまでの成績から、細胞外トラップ形成、好中球エラスターゼ活性、催炎性Lf由来ペプチド濃度およびTGF-β2濃度の動態を黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の炎症フェーズ診断に利用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施予定の動物実験のほとんどについて材料採取までを終えている。これまで黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の亜急性期~慢性期の病態進行に関わる因子を明らかにし、それらの誘導メカニズムを考察した。黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の炎症フェーズを診断するためのマーカー候補を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎の亜急性~慢性期にかけての病態進行には、乳汁中に放出された好中球エラスターゼが深く関わっていることが示唆された。このエラスターゼがどのように放出されるのかについて、細胞外トラップ形成に伴う細胞死および黄色ブドウ球菌毒素による細胞障害との関連をin vitroおよびin situで調査する(一部実施中)。また慢性期において組織の修復に関与する、分泌性白血球プロテアーゼインヒビターや肝細胞成長因子の測定系を作製し、これらの因子が慢性化した黄色ブドウ球菌性乾乳期乳房炎のマーカーになるかどうかを検討する。
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