2011 Fiscal Year Annual Research Report
イントロンの一次塩基配列に基づくヒトバベシア原虫及びその近縁種の進化解析法の開発
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22580352
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
石原 智明 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90082172)
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Keywords | Babesia microti / 進化系統解析 / CCT7遺伝子 / イントロン / 輸血感染症 / 新興感染症 / バベシア症 / 人獣共通感染症 |
Research Abstract |
バベシア症の病原(Babesia microti原虫)はヨーロッパ、アジア、北米の野鼠に広く分布し、マダニの吸血を介してヒトに感染し時に致死的である。病原は4群(Munich,Hobetsu,Kobe,U.S.)から成り(日本には後3種が存在)、185rRNA,β-tubulin,CCT7の遺伝子解析から遺伝的多様性が確認されている。予防は、輸血感染症防止のための不顕性感染者の摘発汎とくに重要だが(米国は1抗原型原虫に抗体検査を実施)、本邦は種類が多く検査体制は確立されていない。本研究の目的は、近縁系統の遺伝的関係解明のためのマーカーを開発し、解析結果を防御対策に活かすことである。マーカー候補はCCT7遺伝子中の6個のイントロンで、検証項目は(1)アライメント精度、(2)マーカー感度、(3)これを用いた集団の遺伝的構造解明である。本年度は、昨年までに決定したB.microti原虫のイントロン配列を用い、(2)マーカー感度、(3)原虫集団の遺伝的構造解明を行った。その結果(1)イントロンの塩基置換率は185rRNAとCCT7遺伝子のそれぞれ約66倍および約3倍で、非常に高い解析精度であること、これによる進化系統解析と集団の遺伝子構造解析の結果、(2)U.S.グループには大きな遺伝的多様性があり、北米、東アジア、ヨーロッパ~中央アジアの3群で構成されること、(3)日本のHobetsu系列とヨーロッパのmunich系列は長い進化史を持つが集団の遺伝子構成は単一であること、(4)Kobe系列は御蔵島由来の株と本州由来株に大きな遺伝的な違いがあることが判った。今後は集団の遺伝子構造をさらに詳しく検討し、原虫の予防対策および検査方法の確立に結びつけたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Babesia microtiのグループはもちろん、それ以外のピロプラズマ原虫についても、集団の遺伝子構造はこれまでほとんど不明であった。今回、B.microtiグループに所属する4系列(U.S.,Munich,Kobe,Hobetsu)がそれぞれ遺伝的に異なる集団構造をとることがはじめて示唆された。今後は、サンプル数を増やして解析するなどにより結果の信憑性の検証を行う必要がある。さらに、どの様な進化生態学的な要因が集団構造の形成にあやかったかを解明できれば、本病に対する公衆衛生学的な対策の策定に大きく役立つと考えられるため、この観点からの検討も行ってみたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今後は、サンプル数を増やして解析するなどによりこれまでに得られた結果の信懸性を検証する。 (2)集団構造の違いから、原虫系列毎に生活環(ダニ-ほ乳類循環)形成の進化史が異なる{(1)宿種またはダニベクターが異なる、(2)宿種やダニ種は同じだが感受性差がある、など}可能性が出て来た。そこで、野外サンプルを用いて、原虫系列とダニ種や動物種やそれらの陽性率が対応するか比較検証し、将来的には、その結果を本病の流行予測やそれに対する公衆衛生学的な対策の作成に役立てたいと考える。 なお、上記計画を遂行する上で大きな問題点はない。
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