2010 Fiscal Year Annual Research Report
牛白血病発症牛におけるプロウイルス遺伝子の組込み部位とその変異に関する研究
Project/Area Number |
22580357
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
泉對 博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10355167)
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Keywords | 遺伝子 / ウイルス / 癌 / 細胞・組織 / 獣医学 / 家畜衛生 / 伝染病 / 牛白血病 |
Research Abstract |
レトロウイルスは増殖するために自己のゲノムを逆転写後、宿主ゲノムに組込むことが必要である。近年、いくつかのレトロウイルウイルスにおいて、ウイルスゲノムが優先的に組込まれる領域が存在することや、病態別に組込まれる領域が異なることが報告されている。本研究では白血病発症牛においてBLVプロウイルスがどのような領域に組込まれているかを解析した。材料は関東地方の食肉検査所から提供された48個体90サンプルとBLV持続感染株化細胞1株を用い、組込み位置の解析はInverse PCRを行った。その結果55の独立した組込み位置を決定することができた。 BLVプロウイルスに隣接したウシゲノムを解析した結果、特定の染色体に組込まれる傾向は無かった。BLVプロウイルスの43.6%が遺伝子上に組込まれており、62.5%が宿主ゲノムの転写方向と一致していた。遺伝子に組込まれたBLVプロウイルスは1ヶ所の組込み位置を除いて全てイントロンへ組込まれており、エクソンに組込まれたBLVプロウイルスにおいてはストップコドンの下流に組み込まれていた。また、転写開始点近傍やCpGアイランドへ優先的に組込まれることは無く、繰返し配列や回文配列へ特異的に組込まれてもいなかった。このように、BLVプロウイルスの組込み位置にホットスポットは存在しなかったが、遺伝子への組込みでは非常に高い確率(95.8%)でイントロンであり、HIV-1のように優先的に遺伝子に組込まれてはいなかった。このことはBLVプロウイルスの組込み位置がBLVのウイルス産生の抑制に有利に働き、BLV感染細胞が長期に亘って免疫応答を回避していることが示唆された。
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