2011 Fiscal Year Annual Research Report
牛白血病発症牛におけるプロウイルス遺伝子の組込み部位とその変異に関する研究
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22580357
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
泉對 博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10355167)
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Keywords | 遺伝子 / ウイルス / 癌 / 細胞・組織 / 獣医学 / 家畜衛生 / 伝染病 / 牛白血病 |
Research Abstract |
牛白血病ウイルス(BLV)が組込まれることで起こる宿主細胞側の細胞内シグナル伝達因子の発現変化について解析した。B細胞レセプター(BCR)からのシグナル伝達は細胞の生存、増殖および分化を正および負に制御している。そのシグナル伝達に密接に関与する非受容体型チロシンキナーゼであるIck/yes-related novel tyrosine kinase(Lyn)およびSpleen tyrosine kinase(Syk)の発現量の変化を解析し病態への関与があるかを検討した。その結果、PL発症牛のSykの発現量はBLV陰性牛と比較して有意に(P<O.05)上昇していたが、腫瘍発症牛はBLV陰性牛と比較して有意に(P<0.05)低下していた。一方、腫瘍発症牛のLynmRNAの発現量はBLV陰性牛と比較し有意な上昇が認められた(P<O.05)。PL発症牛もBLV陰性牛と比べLyn発現量の上昇傾向が認められたが、有意な差は認められなかった(P>0.05)。Lynは病態の進行とともにmRNA発現量が上昇する傾向が認められた。PL発症牛ではLynおよびSykのmRNA発現量が上昇していたことから、BCRシグナルが亢進し、細胞の分化や増殖に影響を与えている可能性が示唆された。一方、腫瘍発症牛においてはLyn mRNA発現量の上昇は認められたが、Syk mRNA発現量の低下が認められたため、LynはSykを介さずにシグナル伝達を引き起こすことが考えられた。 BLVのgp30にはC末端側にYxxLモチーフが3つ連なってコードされており、2つのYxxLモチーフを骨格とするITAMが重複した配列を有する。現在、ミエローマ細胞にYxxLモチーフをC末端側からひとつずつ段階的に欠損させたgp30を導入し、上記したシグナル伝達がgp30のITAMによって引き起こされているかの解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は腫瘍発症牛を対象としてBLVゲノムの組込位置を検索し、BLVの組込み位置はその病態発症に直接影響することは無いが、転写に不利な領域へ組込まれていることを示した。今年度はBLVが組込まれることで起こる宿主細胞側の細胞内シグナル伝達因子の発現変化について解析し、BLV陰性牛、PL牛、腫瘍発症牛でこれらに違いがあることを明らかにした。研究課題は順調に進んでいると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
BLVのgp30全長を導入したミエローマ細胞と、YxxLモチーフをC末端側からひとつずつ段階的に欠損させたgp30を導入したミエローマ細胞で、各種細胞の細胞内シグナル因子および分化について比較し、細胞の増殖分化に関与するトニックシグナリングがgp30のITAMによって引き起こされているかを解析する。また、様々な病態のBLV感染牛においてBLV遺伝子の発現とBLVが組込まれている宿主側遺伝子の発現を比較し、BLV遺伝子の発現が宿主側の遺伝子発現に依存しているかを調べる。
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