2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22580375
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金尾 忠芳 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40379813)
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Keywords | 無機硫黄化合物 / 硫黄代謝 / 硫黄酸化細菌 / 酵素化学 / 好酸性細菌 / 酵素の結晶化 / refolding / 構造解析 |
Research Abstract |
本研究は、硫黄酸化細菌に存在する無機硫黄化合物を基質とした酵素について詳細な解析を行い、この様な細菌の硫黄代謝に対する理解を深めるとともに、「無機硫黄の酵素化学」という新たな学問領域への知見の蓄積を目的とする。 平成23年度は、引き続き鉄硫黄酸化細菌の一種Acidithiobacillus ferrooxidansを研究の対象とし、硫黄化合物を代謝する酵素であるテトラチオン酸ハイドロラーゼ(4THase)について詳細な研究を行った。この4THaseは、無機硫黄化合物の加水分解反応を触媒し一部の好酸性微生物にのみ確認されている、一次構造・反応機構においても極めてユニークな酵素である。本酵素のX-線結晶構造解析は、これらを解明する最も有効な手段である。 昨年度、本研究代表者によって、4THaseをコードした遺伝子(Af-tth)が同定され、大腸菌による組換え発現と封入体による回収、refolding法による活性型酵素の獲得に成功した。このrefolding条件を検討したところ、通常報告されている中性条件でなく、本酵素は酸性条件下でrefoldingさせることで活性型酵素になることを初めて解明した。さらにこの様にして得られた活性型の本酵素を、カラムクロマトグラフィーなどを用いて高度に精製し、結晶化を試みた結果、微小な4THase結晶を獲得することに成功した。 今年度は、この結晶化条件をさらに詳細に検討した。沈殿剤の種類と濃度、添加する塩の種類と濃度、pHなどにおいて細かな条件の組み合わせを試行することで、構造解析に値する0.1mm程度の六画柱の結晶を獲得することができた。これを兵庫県佐用町の大型放射光施設SPring-8にて解析を行った結果、2.5Åの回折像を得た。しかしながら新規な一次構造を持つ本酵素の立体構造の解明には、分子置換法が適用できないことから、より高い解像度の回折像を得る必要があることが分かった。 また海洋性硫黄酸化細菌Acidithiobacillus thiooxidans SH株に由来する4THaseの精製と性質の検討および遺伝子の同定を行った。本酵素は他の4THaseとは異なる単量体構造を有している興味深い結果が示された。この遺伝子の大腸菌へのクローニングと組換え発現を行った結果、SH-Tthは封入体を形成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組換え発現により獲得の困難であった4THaseをrefdding処理することで活性型酵素として回収できたことは、大きな進歩であった。また、これの結晶化に成功したことからも現時点では順調であると言える。ただし、最終目標はこれの構造解析であるため、今回獲得できた結晶が、X線により解析可能な結晶であるかどうかは、現時点では判断できず、その成否にかかっている.また近縁種のA. thiooxidans SH株からも4THaseを精製し、遺伝子を同定できたことは新たな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べた様に、4THaseの結晶からX線構造解析が行えるかが重要な点であり、結晶化条件の最適化を計るとともに純度のより高い試料の調製方法も検討を重ねる必要があるため、これらの検討を1つずつ実行して行きたい。 また、海洋性硫黄酸化細菌SH株の4THaseについても遺伝子が同定できたことから、組換え発現および結晶化を試みる。特にSH株由来の4THase結晶は、必ずできるとは限らないため、様々な条件において実施することが重要である。これらは常法に従い、スクリーニングkitにより大枠を決定し、結晶の得られたものに関して詳細に条件検討することで、対応可能であると考えられる。
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Research Products
(3 results)