2011 Fiscal Year Annual Research Report
異担子菌酵母を宿主とする担子菌キノコ由来リグニン分解酵素の大量生産系の確立
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22580376
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
麻田 恭彦 香川大学, 農学部, 教授 (70151032)
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Keywords | リグニン分解酵素 / ラッカーゼ / 担子菌 / 異担子菌酵母 |
Research Abstract |
本研究の目的は、異担子菌酵母Rhodosporidium toruloidesを宿主に用いる遺伝子工学的手法により、担子菌キノコ由来のリグニン分解酵素を大量生産することである。 1.食用担子菌キノコGrifola frondosa(マイタケ)のラッカーゼをコードするcDNAのクローニングと解析 昨年度、G.frondosaが菌体外に分泌生産するラッカーゼ(リグニン分解酵素の一種)に関する解析を行い、その特性から、本酵素を遺伝子工学的大量生産実験における対象酵素に定めることとした。そこで本年度では、本酵素をコードする全長cDNAのクローニングと解析を行って、本cDNAが21アミノ酸残基から構成されるシグナルペプチドを含む520アミノ酸残基をコードするORFを有することなどを明らかとした。 2.異担子菌酵母R.toruloidesを対象とする新規形質転換ベクターの構築と形質転換条件の改良 昨年度に構築した形質転換ベクターと形質転換方法の組合せでは、低い形質転換効率しか得られなかった。そこで本年度では、新たにハイグロマイシン耐性遺伝子をマーカーとする形質転換ベクターを構築すると共に、形質転換方法としてエレクトロポレーション法の諸条件を種々改良した。その結果、昨年度の結果と比較すると高い形質転換効率が達成された。 3.R.toruloidesのグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素遺伝子(GPD)のクローニングと解析 異種タンパク質の大量生産を可能とするためには、高発現プロモーターを付与したベクター(高発現ベクター)の構築が必須である。GPD遺伝子は一般に構成的高発現が予想され、そのプロモーター領域は多くの宿主を対象とする高発現ベクターの構築に利用されている。そこで、本菌の同遺伝子のクローニング、解析、およびプロモーター領域とターミネーター領域の単離を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、宿主として用いる異担子菌酵母Rhodosporidium toruloidesの形質転換ベクターの構築と形質転換法の条件設定を完了している。また、対象と定めたリグニン分解酵素であるGrifola frondosaのラッカーゼに関しては、その諸性質の解析、cDNAのクローニングと解析を行った。従って、次年度に予定している、R.toruloidesを宿主とするリグニン分解酵素の大量生産のために必要な準備は全て完了しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成24年度においては、当初の研究計画に基づいて、R.toruloidesを宿主とするG.frondosa由来ラッカーゼcDNAの発現について検討し、ラッカーゼの大量生産、並びに、組換えラッカーゼの検定・諸性質の解析を行う。本菌のグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素遺伝子のプロモーター領域を利用して、G.frondosa由来ラッカーゼの高発現ベクターを構築する。得られた発現ベクターをR.toruloidesに導入して形質転換株を取得する。さらに、形質転換株の培養条件を種々検討し、ラッカーゼの大量分泌生産のための諸条件を確立する。また、組換えラッカーゼの諸性質や特性について、ネイティブ酵素との比較を念頭に置いて明らかにして、組換えラッカーゼの有用性を確認する予定である。
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