2010 Fiscal Year Annual Research Report
複合汚染条件で栽培した植物の重金属耐性と金属リガンド間相互作用の解明
Project/Area Number |
22580377
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井上 雅裕 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80203256)
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Keywords | 環境浄化 / 植物生理 |
Research Abstract |
本研究の目的は自然界の複合汚染環境を想定した実験計画により複数の重金属による植物生体内での分子間相互作用の実態を解明することにある。具体的には、複数重金属競合下で、ペプチド性リガンドのフィトケラチン(PC)類と非ペプチド性の有機リガンド(有機酸や酸アミドなど)の双方に注目し、それらの相互作用を解明することである。これをうけて平成22年度の研究では、(1)トマト培養細胞におけるCd、Zn、Asによるペプチド性リガンドと非ペプチド性リガンドの生成と結合性を調べ、以下の成果を得た。まず、トマト懸濁細胞に各種の重金属イオンおよびヒ酸(As)を与えて細胞内の有機リガンドの濃度を調べた。その結果、主に重金属のCdと非金属のAsによってペプチド性リガンドであるPCが生成され、それぞれ結合型として蓄積することを確認した。細胞内リガンドとしては他に非ペプチド性の有機酸(特にリンゴ酸とクエン酸)が多く検出されたがこれらがCd/Asと複合体を形成する証拠は得られなかった。また、ペプチド性リガンドのグルタチオン(PCの前駆物質でもある)は、CdとAs以外の重金属によっても濃度が増加することが分かった。従って、トマト細胞内の金属結合リガンドとしてはペプチド性リガンドが重要であることを明らかにした。培地に非ペプチド性リガンドを添加してもペプチド性リガンドの濃度変化には結びつかなかった。これらから細胞内金属結合物質の合成・集積においてリガンド間相互作用を確認できなかった。ただし、リン酸やケイ酸などの無機リガンド(アニオン)の種類によっては金属吸収やPC合成能に対して特異的な作用が示すことが分かった。今後は、これらの研究に加えて、(2)液胞中への輸送とその中における複合体形成能、(3)植物体(特にシュート)中の輸送能と複合体形成能、に対するリガンドの関与および相互作用を明らかにする予定である。
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Research Products
(8 results)