2012 Fiscal Year Annual Research Report
水環境―微生物反応系を用いたアジア大河デルタ農村の地下水ヒ素汚染機構の解析
Project/Area Number |
22580378
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒澤 靖 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (70128114)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ピート / アンモニウム態窒素 / 還元環境 / 微生物活動 / 化学肥料 / 溶出 |
Research Abstract |
バングラデシュの地下水ヒ素汚染地と非汚染地で、地下水並びにピート(泥炭)のヒ素濃度、アンモニウム態窒素濃度、酸化還元電位、窒素安定同位体比を測定した。ヒ素汚染地の地下水は、酸化還元電位が低く還元的状態で、アンモニウム態窒素濃度は高かった。しかし、非汚染地域の地下水は、酸化還元電位が高く、アンモニウム態窒素濃度は低かった。ピートは地下水面より下で井戸底面より浅い位置、すなわち井戸水に接触する位置に存在した。ピートは他の堆積物よりも多くヒ素と窒素を含んでいた。ピートは、ヒ素汚染地域には存在したが、非汚染地域には存在しなかった。したがってピートは、地下水ヒ素汚染の発生に重要な役割を果たしていると考えられた。地下水とピートの各窒素安定同位体比によると、窒素の供給源は地下水・ピートとも窒素化学肥料と判定された。ヒ素汚染地における地下水の還元的性質は、酸素を消費する微生物の活動によってもたらされたと考えられた。地下水およびピート中の窒素は、微生物の養分となって微生物活動を活発化させたと考えられた。微生物活動の結果生じた地下水の還元環境下において、ヒ素が堆積物層(主にピート層)から地下水に還元溶出のメカニズムで溶出すると考えられた。今まで、アンモニウム態窒素は、堆積物からのヒ素溶出を発生させるのでなく、堆積物から地下水にヒ素が溶出した結果としてヒ素と同時に存在するという説があった。しかし本研究では、地下水中のヒ素とアンモニウム態窒素の存在比率から、ヒ素はアンモニウム態窒素に比べ小さな割合を占めるに過ぎず、またアンモニウム態窒素が0のときでもヒ素濃度が0でないことがわかり、これより上記の説は否定された。本研究により、堆積物から地下水へのヒ素に溶出に、アンモニウム態窒素を利用する微生物の活動が関与している可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにバングラデシュ、ネパール、ベトナムで調査を行い、当初予定していた対象地を全部網羅することができた。現地における地下水の調査、日本に持ち帰った堆積物のヒ素分析も順調に終えた。ただし、堆積物に存在する微生物の分離同定作業はまだ残っている。これまでの測定結果をもとに、今後微生物と地下水ヒ素汚染の関連性を考察する。今のところ大きな遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の現地調査は、ヒ素汚染が特に深刻であるバングラデシュ、ベトナムを中心に行う。地下水ばかりでなく堆積物についても、化学的および微生物的分析を行う。堆積物の分析はピートを中心に行う。これは、これまでの調査からピートが地下水ヒ素汚染に大きな関わりを持つ可能性があると判明しためである。解析は、調査した全域のデータを対象に行い、アジアに共通する堆積物から地下水へのヒ素溶出機構、これに影響する要因を明らかにする。
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Research Products
(6 results)