2013 Fiscal Year Annual Research Report
水環境―微生物反応系を用いたアジア大河デルタ農村の地下水ヒ素汚染機構の解析
Project/Area Number |
22580378
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒澤 靖 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (70128114)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アンモニウム態窒素 / 還元的状態 / ピート質粘土 / 窒素安定同位体比 / 微生物 / タライ平原 |
Research Abstract |
ネパール・タライ平原のヒ素汚染地の5つ農村で井戸水(地下水)ヒ素濃度を測定した。ヒ素濃度は4-1,150 ppb(サンプル数38)の範囲、平均値は542ppbで、大部分はWHOガイドライン10ppbを超える高濃度の値であった。またヒ素濃度は、農村別に違いがあった。また、井戸水のアンモニウム態窒素濃度は0 - 4 ppm、pH は 6.7-7.7、硝酸態窒素濃度はほぼ0 ppm、井戸の深さは11-52mであった。 井戸水の酸化還元電位は、60-130 mV(還元的状態)で、還元的状態は井戸水に高濃度ヒ素が発生するための必要条件と考えられた。井戸水の水質項目のうち、どの項目がヒ素濃度に大きく影響するかを知るため、井戸水のpH、酸化還元電位、アンモニウム態窒素濃度、井戸の深さを説明変数、井戸水のヒ素濃度を目的変数として、重回帰分析を行った。その結果、井戸水のヒ素濃度はアンモニウム態窒素のみで説明できた。さらに、井戸水のアンモニウム態窒素の安定同位体比分析を行ったところ、安定同位体比の値は3.1-4.4 ‰で、アンモニウム態窒素の供給源は、窒素化学肥料または土壌有機物であると考えられた。これより、窒素化学肥料または土壌有機物が地下水ヒ素汚染に関連する可能性のあることが明らかになった。 バングラデシュのヒ素汚染地で採取した土壌のうちピート質粘土の部分は、ヒ素を多量に含んでいた。そこでピート質粘土の窒素利用微生物を分析した。分析の結果、ピート質粘土にはアンモニア化成菌と脱窒菌が存在することが確認できた。しかし硝化菌が存在することは確認できなかった。したがって、ピート質粘土内では、硝化菌の働きでアンモニウム態窒素が硝酸態窒素に変わることはないと考えられた。そしてこのことが、地下水ヒ素汚染地の堆積物(ピート質粘土)・地下水中でアンモニム態窒素が多いことにつながっている可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで予定していた現地での調査および調査結果の解析をほぼ終えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌中のアンモニウム態窒素の安定同位体比分析を行う予定であるが、これまで採取した土壌から十分なアンモニウム態窒素が得られなければ、現地に行ってこれを採取する予定である。本年度は最終年度で、これまでの現地調査や解析の結果に基づいて、研究成果をまとめる予定である。
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Research Products
(4 results)