2011 Fiscal Year Annual Research Report
窒素センサータンパク質P-IIによる抗酸化性アミノ酸シトルリンの代謝制御
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22580385
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
明石 欣也 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (20314544)
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Keywords | シトルリン / 窒素代謝 / センサータンパク質 / P-II / 野生種スイカ / 抗酸化性 / アミノ酸 |
Research Abstract |
植物は、環境ストレス下において光合成が抑制され、活性酸素による過酸化ストレスに暴露される。このストレスに対処するために、環境変化に応答して、防御物質の大規模な生合成が活性化される。この時、下位葉での光合成タンパク質の分解が促進される一方、プロリンやシトルリンなど、窒素を高含有する適合溶質を上位葉に高蓄積させ、環境適応能の向上を図る。環境ストレスは植物の基本代謝を劇的に変化させるが、これら一連の代謝変動を統合的に制御する分子メカニズムに関しては不明な点が多い。 乾燥強光ストレス耐性の野生種スイカは、ストレスに際してシトルリンを高蓄積させる。シトルリンはアルギニン代謝経路の中間体である。その12種の代謝酵素群のうち、経路の第2段階を触媒するNAGK酵素は、ストレスに伴い活性が増加するだけでなく、アルギニンによるフィードバック阻害が解除される。このフィードバック阻害解除を担う因子として、炭素・窒素比(C/N)センサーであるP-IIタンパク質が関与することを明らかにした。さらに、経路の第1段階を触媒するNAGS酵素を野生種スイカよりクローニングし遺伝子構造を解析したところ、NAGK酵素とアミノ酸配列が有意に相同なドメインを有しており、NAGS酵素がNAGS-NAGKの両活性を有するか、あるいはP-IIタンパク質がNAGSタンパク質中のNAGK相同ドメインを利用して相互作用し、その触媒活性を調節している可能性が示唆された。すなわち、ストレス下で誘導されるP-IIタンパク質がシトルリン生合成の複数の酵素と相互作用し触媒活性を変化させ、シトルリンの高蓄積に貢献する可能性が示唆された。そこでNAGS組換タンパク質を大腸菌にて作出し、現在その酵素学的性質を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C/Nセンサータンパク質P-IIの標的酵素として、当初から想定していたNAGKに加えて、新たにNAGS酵素が標的となっている可能性が示され、適合性防御物質シトルリンの大量生合成の制御においてP-IIタンパク質が重要な役割を果たしているというシナリオを検証する上で、新たな展開が見られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、NAGS組換タンパク質を用いた酵素学的解析によりNAGSの触媒様式を明らかにし、特にNAGK活性の有無について検証すると共に、NAGSおよびP-II組換タンパク質を用いて、その相互作用様式を調べると共に触媒活性への影響を評価する。合わせて植物体内における結合様式についても評価する。これらの解析により、P-IIタンパク質によるシトルリン生合成系の制御が、その第2段階だけでなく第1段階にどのような影響を及ぼしているのかを解明し、P-IIシグナルによるストレス代謝制御の全容の理解を図る。
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Research Products
(2 results)