2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22590014
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽田 紀康 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (70296531)
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Keywords | 寄生虫 / 糖鎖抗原 / 化学合成 / エキノコックス / イヌ回虫 / ビオチンタグ / ELESA |
Research Abstract |
当研究室では細胞表層における複合糖質糖鎖の機能解明の一助として、下等動物より得られる糖脂質や糖タンパク質糖鎖の化学合成を目指してきた。近年においては寄生虫の持つ糖鎖を化学的に合成することで、寄生虫感染患者に対する診断薬への応用を模索している。今年度は表題である『寄生虫感染診断薬を目指した糖鎖抗原の化学合成』の一環として1.エキノコックス(単包虫)E.granulosus由来の糖タンパク質糖鎖の合成及び2.イヌ回虫由来糖タンパク質糖鎖の合成を行った。1.に関しては、これまでに多包虫E.multi locularisより見出された五種類のオリゴ糖鎖を合成し、多包条虫患者血清に対する抗原性を調べたところ、Galα1-4Ga1β1-3GlcNAcが強い相関を示した。しかし、単包条虫感染患者の血清とも弱いながら反応したことから、本年度は、単包虫より見出された糖鎖のうち、Galβ1-3Galβ1-3GlcNAc及び、Galα1-4Galβ1-3Galβ1-3GlcNAcを合成し、後者に関してはビオチンプローブを結合させて目的化合物を得た。三糖に関しては、四糖合成時に得られた三糖受容体の保護基を、すべて脱保護し、現在ビオチンプローブとの縮合を検討している。一方、2.に関してはイヌ回虫より見出された新規糖鎖構造であるFuc2Meα1-2Gal4Meβ1-3GalNAcと四種類の誘導体を合成して感染患者に対する構造活性相関を検討した。その結果、メチル基を1つ以上含む誘導体には抗原性が見出されたが、メチル基を持たないモデル化合物は抗原性を示さないことからメチル基の重要性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単包虫由来の糖鎖は目標の五糖、六糖まで、達成できなかった。これは三糖縮合時に立体選択性が悪く、四糖までは、収率の低下を踏まえて合成できたが、それ以上の伸長はさらなる収率低下と混合物を与え、困難であると考えたからである。一方、当初予定のブタ回虫由来の糖鎖構造の合成は思うように進まず、合成計画の変更がのぞまれた。しかし、イヌ回虫の糖鎖が目標通り合成できたのは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
単包虫由来の糖鎖合成は、還元末端からステップワイズに合成する方法から非還元末端二糖誘導体をあらかじめ合成し、ブロック合成を試みることにより、収率の改善と五糖の合成を達成する。また、ブタ回虫由来の糖鎖においても、保護基を変えることで収率の改善を図り、標的化合物を目指す。一方、これまでにマンソン住血吸虫より見出された糖脂質の合成を行ってきたが、新たに糖タンパク質糖鎖の合成にも着手する。
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Research Products
(3 results)