2010 Fiscal Year Annual Research Report
特異な縮環トロパン構造を有する抗腫瘍性天然物ヘデラシンの全合成研究
Project/Area Number |
22590020
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
青柳 榮 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (30212385)
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Keywords | 合成化学 / 天然物合成 |
Research Abstract |
シソ科植物から単離されたヘデラシンA及びBは、結腸癌細胞株Caco-2に対する抗腫瘍作用が報告されており、新たな作用機序を有する抗癌剤開発のためのシード化合物として期待される。また両アルカロイドは、これまでの天然有機化合物には見られなかった、トロパンとシクロペンタンが融合した新規1-アザトリシクロ[6.2.1.0^<2,6>]ウンデカンを共通母格とする構造を有することから合成標的として魅力ある化合物である。ヘデラシンA及びBの合成経路の開発を目指してラセミ体での全合成研究を実施し、既に、テトラヒドロペンタレノン誘導体を出発原料として用い、アリルシアナートの[3,3}シグマトロピー転位を用いる立体選択的アミノ基導入、エンイン閉環メタセシスなどを利用して合成した4-アミノ置換-3a,8a-ジメチルアズレン骨格の基本合成経路を開発している。 当該年度では、上記4-アミノ置換-3a, 8a-ジメチルアズレン誘導体より、フラノン環形成の検討を経て5-アミノ置換アズレノ[5,6-b]フラノン中間体への効率的変換条件を確立した。次にヘデラシン骨格である1-アザトリシクロ[6.2.1.0^<2,6>]ウンデカンの構築について検討した。この目的のためにはC-12位を選択的に酸化する必要があったが、種々の検討の結果、フラノン環をシロキシフラン誘導体に誘導した後、ジメチルジオキシランを低温で作用させる穏和な酸化条件にて達成することができた。ここに得られた化合物よりトロパン骨格を形成するため、5-アミノ置換アズレノ[5,6-b]フラノン中間体のC-5位アミノ基とC-12位間の渡環反応について検討を行った。その結果、アセトニトリル-水中で酸を作用させると、保護基の除去とともに渡環反応が進行し、ヘデラシン骨格が生成することを確認することができた。
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