2010 Fiscal Year Annual Research Report
天然物合成を基盤とするエピジェネティクスを指向した構造活性相関研究
Project/Area Number |
22590034
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱島 義隆 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (40333900)
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Keywords | ヒストンメチル化 / 天然物合成 / 類縁体 / 構造活性相関 / エピジェネティクス / (+)-chaetocin / G9a |
Research Abstract |
(+)-Chaetocin(1)は1970年に単離・構造決定された真菌の二次代謝物であり、エピジチアジケトピペラジン(ETP)が二量化した対称な八環性化合物である。1は、遺伝子発現を司るリシン選択的ヒストンメチル化酵素に対する阻害活性を示す。ヒストンのメチル化の異常は、ガンに密接に関与する事が報告されているため、ヒストンメチル化酵素阻害剤の開発はたいへん注目されている。本研究では、エピジェネティク研究に有用なすぐれた阻害剤の開発を目標に、1の構造活性相関を明らかにする研究を行っている。 本年度、我々はD-アミノ酸誘導体を出発原料とする(+)-chaetocinの初の全合成を達成した。本合成はわずか9工程という短工程ルートにて達成されており、合成の鍵はふたつのラジカル反応である。すなわち、四環性ジケトピペラジンに対するラジカル的プロモ化によりα位を選択的に酸化した後に、コバルト試薬を用いた還元的二量化反応により一気に八環性骨格を構築した。最後に、硫化水素を用いる置換反応により硫黄官能基を導入してジスルフィド結合を形成し、1を得た。更に、その全合成における各工程を詳細に調べ、副反応や立体選択性の発現機構を明らかにし、有機合成化学的に有用な知見を得る事に成功した。 また、上記全合成を基盤として硫黄原子を欠損した類縁体を合成した。合成した類縁体を用いて、リシン選択的ヒストンメチル化酵素G9aに対する阻害活性試験を行ったところ、硫黄欠損体は全く活性を示さなかった。このことは、(+)-chaetocinのジスルフィド結合部位が活性発現に極めて重要であることを示唆している。
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