2011 Fiscal Year Annual Research Report
天然物合成を基盤とするエピジェネティクスを指向した構造活性相関研究
Project/Area Number |
22590034
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱島 義隆 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (40333900)
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Keywords | 有機化学 / 天然物化学 / (+)-chaetocin / エピジェネティクス / 構造活性相関 / ヒストンメチル化酵素 |
Research Abstract |
(+)-Chaetocin(1)は1970年に単離・構造決定された真菌の二次代謝物であり、エピジチアジケトピペラジン(ETP)が二量化した対称な八環性化合物である。1は、遺伝子発現を司るリシン選択的ヒストンメチル化酵素に対する阻害活性を示す。ヒストンのメチル化の異常は、ガンに密接に関与することが報告されているため、ヒストンメチル化酵素阻害剤の開発はたいへん注目されている。本研究では、エピジェネティク研究に有用なすぐれた阻害剤の開発を目標に、1の構造活性相関を明らかにする研究を行っている。 22年度までに、D-アミノ酸誘導体を出発原料とする(+)chaetocinの初の全合成を達成した。その知見を基に23年度は誘導体合成を進めた。まず、1の構造的特徴のひとつであるジスルフィド結合に注目し、その還元体であるテトラチオール体と硫黄官能基を除去した誘導体を合成し、これらのリシン選択的ヒストンメチル化酵素G9aに対する阻害活性試験を行った。その結果、硫黄官能基は活性発現に重要であること、必ずしもジスルフィド結合を持つ必要がなく、チオール体でも十分な活性を示すことが明らかとなった。また、1のダイマー構造の必要性を検証すべくモノマーの合成に取り組んだ。二量化している部位の水素置換体は合成が困難であったが、水素の代わりにアリル基で置換した類縁体は合成することに成功した。活性評価試験を行ったところ、我々が予想した通り、モノマー体でも遜色ない阻害活性が認められた。以上のように、より単純化した類縁体の設計に重要な知見を得ることができた。 また、(+)-chaetocinとその鏡像異性体のHL-60細胞に対する細胞死誘導活性を検討した。その結果、非天然物体の方がより高い活性を示すことを明らかにした。この誘導活性は、caspase8/caspase3活性化経路に由来することも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた(+)-chaetocinの酵素阻害メカニズムに関する研究が遅れている。しかしながら、類縁体合成とその活性評価は非常に順調に進展している。研究の進展に伴ってそちらにエネルギーを集中したために、当初の基礎的なメカニズム研究が遅れているが、全体として良好な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
構造活性相関研究の進展が著しいので、最終年度も更なる誘導体の合成と活性評価を行う予定である。これにより、より単純な構造でありながらも、サブタイプ選択的なG9a阻害剤の開発が可能になると考えている。また、ジスルフィド結合を有する化合物は細胞毒性が懸念されるため、酵素阻害能だけでなく細胞毒性についても検討を行う。
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Research Products
(7 results)