Research Abstract |
1.Src型チロシンキナーゼによる細胞分裂制御機構の解明:Src型チロシンキナーゼ阻害剤PP2の単独処理では,分裂期スピンドル形成に対する影響は観察されなかったが,Aurora B阻害剤と併用すると,PP2によるスピンドル形成異常の亢進が観察された。ノコダゾールによりprometaphaseに同調し,リリース10分後における分裂期スピンドル形成に対する影響を調べた結果,PP2処理により異常スピンドルの形成が亢進した。PP2によるスピンドル形成異常は,HeLa S3細胞におけるSrcの誘導発現により部分的に解除された。さらに,Src, Fyn, Yesを欠損させたマウス線維芽細胞であるSYF細胞と,この細胞にc-Srcを恒常的に発現させたSYF/c-Src細胞株を用いて,Srcの発現の影響を調べた。Srcの発現は,Aurora B阻害剤存在下における中心体からのアスター形成を促進させた。以上の結果より,Srcはスピンドル形成を制御することにより分裂期の制御に関与することを明らかにした。 2.Src活性異常の分裂期への影響:Src活性の異常亢進型であるv-Srcの誘導発現株を樹立した。この細胞は,ドキシサイクリンで処理する事によりv-Srcを誘導発現し,E-カドヘリンの分解などによる細胞の浮遊化を誘導した。さらに,チロシンリン酸化レベルの亢進,ERKの活性亢進も誘導した。細胞増殖に対するv-Src発現の影響を調べた結果,v-Srcの発現レベルに依存した増殖阻害が観察された。また,フローサイトリーによる細胞周期解析により,v-Src発現は細胞周期の異常を誘導すること,顕微鏡観察により二核化を誘導することを見出した。 以上の結果より,Src型チロシンキナーゼは分裂期進行を制御し,Src型チロシンキナーゼ自身の活性制御異常は,細胞周期や分裂期の進行に影響することが示唆された。
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