2011 Fiscal Year Annual Research Report
がんの増殖と骨転移におけるプロスタグランジンEの役割解明と創薬展開
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22590058
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮浦 千里 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20138382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 全規 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (80401454)
平田 美智子 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 助教 (40544060)
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Keywords | プロスタグランジンE / がんの骨転移 / 固形腫瘍 / がん |
Research Abstract |
本研究課題では、ヒトがん細胞(乳がん・前立腺がん)を骨へ高率に転移する株として確立、ヌードマウスへ移植して、骨転移と皮下固形腫瘍形成のInvivo解析を実施し、PGEに依存した血管新生と組織浸潤に着目したIn vitro解析も行なった。本年度は、(1)骨に高率に転移するヒトがん細胞の株化とin vivo解析と(2)in vitroメカニズム解析を行った。さらに、当初計画に加え、(3)マウス乳がん細胞とマウス前立腺がん細胞を用いた検討も実施した。 (1)骨に高率に転移するヒトがん細胞の株化とin vivo解析 ヒト乳がん細胞(MDA-MB231)およびヒト前立腺がん細胞(LNCaP)をヌードマウスに移入し、骨転移巣からがん細胞を回収して骨転移実験を繰り返し、100%の確率で骨転移する細胞株を確立した。それら細胞をヌードマウスの尾静脈および皮下移入すると、骨転移および固形腫瘍において、mPGES・COX-2遺伝子誘導とPGE産生が亢進すること、骨転移巣では骨破壊が進行することが明らかとなった。 (2)in vitroメカニズム解析 上記のがん細胞を用い、PGE合成系酵素・VEGF発現・FGF産生・浸潤活性について性状解析した結果、宿主由来細胞(線維芽細胞、骨芽細胞)と接着することにより、PGE、FGFおよびVEGFの産生が亢進し、血管新生と骨吸収亢進を促すことが明らかとなり、がん細胞と宿主細胞の密接な関係が示された。 (3)マウスがん細胞を用いた転移系確立 マウスがん細胞は移植実験に近交系マウスや遺伝子欠損マウスを使用できる点で優れている。そこで、マウス乳癌細胞(4Tl)ならびに前立腺癌細胞(TRAMP-CI)を用い、骨転移系の確立を検討した。その結果、4T1細胞は宿主由来PGEに依存した骨破壊を伴う骨転移を起こすこと、TRAMP-C1細胞移入系においても骨破壊を伴う骨転移を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、ヒトがん細胞(乳がんMDA-MB231・前立腺がんLNCaP)を用いた転移系確立と解析を実施したが、この当初計画の達成に加えて、マウスがん細胞(乳がん4T1・前立腺がんTRAMP-Cl)を用いた転移系確立にも着手し、骨に高率に転移する移植動物実験系を構築することができた。マウス由来がん細胞を用いると、免疫不全のヌードマウスを用いる必要がなく、各種遺伝子欠損マウスを用いた解析も可能となることから、今後の研究発展に大きく寄与すると考えられる。従って、現在までの達成度は、当初計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更ならびに研究遂行上の問題点はない。上述のようにマウスがん細胞を用いた転移系も確立できた成果を生かし、ヒトがん細胞とマウスがん細胞の両方を用いた解析を行い、本研究課題のさらなる推進につとめたい。
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Research Products
(23 results)