2011 Fiscal Year Annual Research Report
感覚神経伝達物質CGRPによる生体防御系制御機構の解明
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22590062
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻川 和丈 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (10207376)
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Keywords | CGRP / 感覚神経 / 食物アレルギー / 接触過敏症 / 多発性硬化症 / Th細胞 / CGRP受容体欠損マウス / 生体防御系 |
Research Abstract |
新生児期に持続的な痛覚刺激が加わると感覚神経線維数の増加や伸長が起こり、その影響は成体になった後も感覚神経過敏として残存することが知られている。また感覚神経は化学物質刺激によっても活性化される。これらの知見は、「新生児期における弱い持続的な感覚神経刺激はCGRP含有感覚神経を増幅させる。炎症性刺激によりCGRP感覚神経が活性化されると、CGRPが大量に放出され、その結果生体防御系のバランスが崩れ、アレルギー反応が助長される」という仮説をもたらした。この仮説を証明するため昨年度までの研究により、CGRP受容体欠損マウスではfluoresceini sothiocyanate(FITC)塗布による接触過敏反応(CHS)は減弱し、2、4、6-trinitoro-chlorobenzene(TNCB)塗布によるCHSは促進することを認めた。また新生児期のホルムアルデヒド刺激がCGRP含有知覚神経を伸長させることも示した。そこで本年度はまずホルムアルデヒド刺激により血中CGRPレベルの測定を行った。その結果、幼若期にホルムアルデヒド刺激をすると血中CGRPレベルの上昇がもたらされることを明らかとした。そこで新生児期にホルムアルデヒド塗布し、成体期においてTNCB塗布によるCHSを誘導して反応性を確認した。その結果、ホルムアルデヒド塗布によりCHSの顕著な減弱が認められた。一方、FITC CHSでは顕著なアレルギー促進作用が認められた。CGRPはヘルパーT細胞の免疫系をTh2に偏倚させる作用を有する。そこで、FITC塗布マウスの脾臓T細胞を精製後、CD3/CD28刺激し産生されるサイトカインIL-4をELISAにより測定した。その結果、ホルムアルデヒド塗布マウスにおいて顕著なIL-4産生増加が認められた。これらの結果は幼若期における刺激がCGRP含有知覚神経伸長を誘導すると、成体期においてもCGRPを介してT細胞免疫系がTh2有意となり、CHS反応が助長されることを示すものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては計画通り、幼若期マウスにホルムアルデヒド塗布することにより、CGRP含有神経伸長による血中CGRPレベルの上昇を明らかにし、さらにTNCB誘発CHSやFITC誘発CHSモデルを用いた解析におけても,CGRPを介した生体防御系のバランス調整機構の存在を示す結果を順調に得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、神経ペプチドCGRPの受容体がTh細胞にも発現すること,またその受容体を介したCGRPのシグナル伝達によりTh細胞免疫応答を調節していることが示された。そこでCGRP受容体欠損マウスとともにT細胞特異的CGRP受容体欠損マウスを用いた個体レベルでの解析により、その機序を明確にする。さらに2種類存在するCGRPアイソフォームの各欠損マウスの作製と遺伝的背景の純化もほぼ終了したことから、これらのマウスを用いた解析も可能とした。これらのマウスを駆使することにより、CGRPを介した生体防御系制御機構を明確にする予定である。
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Research Products
(6 results)