2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期チェックポイントで機能する薬物代謝酵素発現制御因子とその制御機構の解明
Project/Area Number |
22590068
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
菅谷 純子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (30098131)
|
Keywords | UGTA 1 / PXR / 核内受容体 / 薬物代謝酵素 / リン酸化 / アセチル化 / 翻訳後修飾 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
HepG2細胞などのがん細胞を用いて、細胞分化・増殖時の細胞周期制御メカニズムの解析過程で、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)阻害薬roscovitineが薬物代謝酵素(UGTIAIなど)の発現を亢進することを認め、cdkによる薬物代謝酵素発現制御機構の解明を目指した。CDKI、2、5を阻害するroscovitineの標的を同定するために、CDKI、CDK5をノックダウンしたところ酵素発現レベルに有意な変動は認められなかったが、CDK2をノックダウンするとUGT1A1の発現が亢進したことから、CDK2がこれら酵素の発現を負に制御していることが示された。さらに、cdkが多くの薬物代謝酵素遺伝子転写を調節する核内受容体CARあるいはPXRの発現を制御している可能性について解析を進めた。Roscovitineを作用させてもCARの核内レベルに有意な影響は認められなかったが、PXRの核内レベルが増大したことから、PXRに焦点を当て、UGT1A1発現調節機序を解析した。リガンド結合部位に変異を導入したPXRを用いてUGT1A1遺伝子発現に及ぼすroscovitineの作用を解析したところ、T350A PXRによりUGT1A1 mRNAの発現が亢進し、S350D PXRによりUGT1A1の発現が抑制され、CDK2によるリン酸化が抑制されたことから、roscovitineはPXRの350番目セリンをリン酸化するCDK2の作用を抑制することによりUGT1A1遺伝子転写を亢進させること、言い換えると、CDK2はPXRの活性化を負に制御していることが示された。S350DPXRはrosukovitineを作用させると野生型と同様に核内移行するが、roscovitineで活性化後も活性の低下したアセチル化された状態にあることを初めて明らかにした。また、S350DPXRはheterodimerを形成するRXRとの結合能が低下しており、コファクターSRC2過剰発現により部分的に活性が回復することから、CDK2によるS350のリン酸化はPXRの核内での活性化シグナル伝達を阻害していることが推察された。これらの知見をもとに現在、細胞周期等シグナル伝達系と密接に結び付いた、PXRの翻訳後修飾を介した活性制御機序の解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の変異PXR発現ベクターやコファクター発現ベクターの調製が順調に進み、これらをトランスフェクトした細胞を用いて解析できたことが成果に結びついた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では細胞周期制御と密接に結び付いたシグナルにより活性化されたCDK2がPXRをリン酸化することによって活性が抑制され酵素発現が制御されていることを明らかにした。本研究の過程で、リン酸化だけでなくPXRが翻訳後修飾を受け活性が制御されていることを認めており、翻訳後修飾を介したダイナッミクナなPXR活性制御機構の解明が期待できる。
|
Research Products
(15 results)