2011 Fiscal Year Annual Research Report
線虫生殖巣の成熟・分化におけるカルジオリピンの新規機能の解析
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22590072
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中川 靖一 北里大学, 薬学部, 教授 (00119603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 太郎 北里大学, 薬学部, 助教 (10383655)
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Keywords | カルジオリピン / ミトコンドリア / 脂質 / 発生 / 分化 |
Research Abstract |
ミトコンドリアの固有のリン脂質であるカルジオリピン(CL)はミトコンドリアの種々の機能タンパク質の活性発現やアポトーシスを制御するなど、発生・分化・老化に関わる機能リン脂質として注目を集めている。これまでのカルジオリピンの機能の研究は単離ミトコンドリア、または培養細胞を用いたものであり、個体レベルの研究は皆無である。生体での真のカルジオリピンの生理的機能を明らかにするためには、個体レベルの解析がが不可欠である。本研究はCL合成酵素(cls)遺伝子の欠損した線虫を解析することにより、CLの新たな生理的意義を探ることを目的とする。 平成23年度において研究代表者は、(1)cls欠損線虫の組織別ミトコンドリア機能異常についての解析、(2)cls欠損による生殖巣障害を回避させる分子の検索、(3)生殖巣萎縮の原因因子としてのclsの解析を行った。 cls欠損線虫が不妊であることから、生殖巣のミトコンドリア膜電位を解析したところ、野生型の約50%に低下していた。ミトコンドリア内部の微細構造について電子顕微鏡を用い観察したところ、クリステ構造が消失していた。一方、体細胞組織の代表として筋細胞のミトコンドリア膜電位と内部構造について解析・観察したところ、筋細胞については生殖巣のような異常は観察されなかった。これらの結果は、ミトコンドリア機能や膜構造の維持に対するカルジオリピンの寄与が組織毎、細胞毎に異なっていることを示唆している。 clsによる生殖巣障害の分子メカニズムを明らかにするために、不妊表現型から回避させる分子の検索(サプレッサースクリーニング)を行った。平成23年度内で候補として5株のサプレッサー変異体を得ており、今後それらの変異体の相補性実験や検定交雑を行い、変異遺伝子の同定を目指す。 cls欠損線虫の生殖巣障害の原因が生殖細胞のcls欠損によることを明らかにするために、細胞選択的なRNAiを行った。その結果、生殖細胞に対するRNAiでは不妊となったのに対し、体細胞に対するRNAiでは不妊とはならなかった。 このことから、cls欠損による不妊表現型は生殖細胞自律的に起きているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サプレッサースクリーニングに実際に着手し、候補変異体を複数株得ている。また、cls欠損線虫の生殖巣萎縮が生殖細胞自律的に起こることを明らかにするなど、当初予定していた研究計画は遂行できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
サブレッサースクリーニングを継続して行い、候補変異体を少なくとも20株得る予定である。研究協力者の人数、技術ともに申し分なく、平成24年度中には達成可能であると考える。また、本研究課題から、cls欠損により生殖巣は著しい異常を示すのに対し、体細胞は正常であるという興味深い結果が得られた。これについては、cls欠損に対して体細胞を正常に保つ代替経路が存在するのではないかと予想しており、今後何らかのスクリーニング系を構築し、この代替経路を証明したいと考えている。
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Research Products
(4 results)