2012 Fiscal Year Annual Research Report
休止期の毛包に高発現する細胞増殖因子は毛成長をどのように制御するか?
Project/Area Number |
22590078
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今村 亨 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (80356518)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 毛成長周期 / 休止期 / 繊維芽細胞増殖因子 / FGF18 / 脱毛症 / 形態形成 / 毛包幹細胞 |
Research Abstract |
本研究では、マウスの休止期毛包において高発現することを見出した細胞増殖因子FGF18が、周期的な毛成長とどのように関わるかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、①皮膚特異的にFgf18遺伝子をノックアウトしたマウスをCre-loxP法により作成してその表現型など生物現象を解析すること、②毛包構成細胞の増殖分化とin vitro毛包形成へのFGF18の影響を解析すること、③脱毛症とFGF18の関連を解析すること、を通期の研究内容としている。平成24年度までに、表皮・毛包特異的にFgf18遺伝子を欠損するコンディショナルノックアウト(Fgf18cKO)マウスを作成し、交配を重ねて多数のホモFgf18cKO個体を取得し、その背部体毛に関する表現型を解析した。その結果、野生型マウスでは3-8週間ほど持続する毛成長周期の休止期が、ホモFgf18cKOマウスでは劇的に短縮し1週間ほどになることを発見した。これらの結果から、Fgf18がマウス背部毛包の休止期を維持する決定的に重要な因子であることを示し、平成24年度に皮膚科学の研究分野で最も評価の高い国際専門誌Journal of Investigative Dermatology誌において印刷物として発表した。また平成24年度は、in vitroの細胞系を用いた毛包構成細胞の自己集合を経た毛包自己形成実験系に対して、FGF18が与える影響を詳細に解析して、毛包小器官の発生や毛包幹細胞におけるFGF18の機能を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マウスの休止期毛包において高発現することを見出した細胞増殖因子FGF18が、周期的な毛成長とどのように関わるかを明らかにすることを目的としている。すなわち、毛包という小器官の細胞増殖や分化の活性が最も低いレベルにあると考えられる休止期に、通常は細胞増殖や細胞分化を強力に制御する活性を持つ細胞増殖因子が関わる、細胞制御や器官形成制御の機構を明らかにすることが目的である。この目的で、皮膚特異的にFgf18遺伝子をノックアウトしたマウスを作成したところ、成体まで健康で成体での自発的な毛成長周期を解析する事ができた。しかも、顕著な表現型を見出し、Fgf18遺伝子が毛成長周期の休止期を制御する因子として中心的な分子の一つであることを明らかにした。この成果は学術分野でも一般社会でも大きな関心を呼び、招待講演や新聞掲載などにつながった。このような研究成果が得られたことから、本研究は、当初計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚特異的なFgf18遺伝子をノックアウトマウスの解析により、マウスの成体では、Fgf18遺伝子が毛成長周期の休止期を制御する因子として中心的な分子の一つであることを明らかにした。そこで今後の研究の推進方策は、二点ある。一つは、この生理的現象における分子機構の解析である。そのため、生体外に取り出した細胞による毛包再構成系を使って、FGF18が休止期を維持する際にその背景にある分子機構を解析し、明らかにする。二つ目は、ヒトの疾病との関連である。そのため、ヒト由来試料実験計画で承認された計画に沿って、各種脱毛症患者のバイオプシー試料(ヒト由来試料)における、FGF18タンパク質の局在性や機能を解析する研究を推進する。
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Research Products
(4 results)