2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス抵抗性形成機構におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御の解明
Project/Area Number |
22590086
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
武田 弘志 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70206986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 稔 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (70297307)
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Keywords | ストレス / ストレス抵抗性 / セロトニン(5-HT) / 5-HT_<1A>受容体 / ヒストンアセチル化 / トリコスタチンA / エピジェネティクス / マウス |
Research Abstract |
平成22年度までに、5-HT_<1A>受容体作動薬の処置により形成されるストレス抵抗性と、海馬におけるアセチル化ヒストン3(AcH3)タンパク量の経時間的関連性を見出している。また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるトリコスタチンA(TSA)を脳室内に処置することにより形成されるストレス抵抗性と、海馬AcH3タンパク量の経時的関連性についても同様に明らかにしている。これらの結果は、ストレス性精神疾患の予防および治療に、ヒストンアセチル化を主軸とするエピジェネティクス制御が一役を担う可能性を示すものである。 これらの知見を踏まえ、平成23年度では、まず、TSA処置によるヒストンH3アセチル化について、アセチル化部位ごとの経時的変化について検討した。その結果、リジン9および27のアセチル化がTSA処置2時間後に増加していることを見出した。これらのリジン残基は、昨今、ストレス性精神疾患で注目を集めている脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現に寄与することが知られている。そこで、本研究では次に、TSA処置によるBDNFの発現変化について検討した。その結果、TSA処置2時間後をピークとしてmRNAの、4時間後をピークとしてタンパク質量の発現亢進が認められた。 さらに、TSA処置による他のストレス応答遺伝子の発現変化について検討した。その結果、海馬グルココルチコイド受容体(GR)およびミネラルコルチコイド受容体(MR)の発現変化を見出した。非ストレス負荷マウスではTSA処置による変化は認められなかったが、急性拘束ストレス刺激を負荷したマウスの海馬ではGRs mRNA発現量の減少傾向ならびにMRs mRNA発現量の有意な増加が認められ、これらの変化に対してTSAの脳室内投与は増強効果を示した。これらの知見は、海馬ヒストンアセチル化を誘導することが、生体のストレス応答をポジティブに制御し得ることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文を投稿した際のコメントで求められた追加実験にも時間および消耗品経費を要したため、当初予定していた実験以上の実験を計画、実施するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、計画通り、下記の試験を実施する予定である。 ●TSA処置により誘導されるBDNFの発現増加が、ヒストンアセチル化(AcH3K9およびK27)による直接的な制御を受けているか、クロマチン免疫沈降法とPCR法を組み合わせたChlP on PCR法により検証する。 ●TSA処置により誘導されるヒストンH3リジン9および27のアセチル化が、同部位のジおよびトリメチル化(この部位のメチル化が亢進することでBDNFの発現が抑制される)への寄与を検証する。 ●A)およびB)の変化が、5-HT_<1A>受容体作動薬においても同様に引き起こされるかを検討することで、5-HT_<1A>受容体作動薬の有用性を立証する。
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Research Products
(6 results)