2010 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロラチリズムモデルラットにおける酸化ストレス運動神経細胞死の毒性機構
Project/Area Number |
22590088
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
草間 國子 日本大学, 薬学部, 教授 (10130436)
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Keywords | 運動神経 / 運動神経疾患 / 血管 / 疾患モデル / 酸化ストレス / TRPチャネル / 神経毒 / 毒性学 |
Research Abstract |
ニューロラチリズムはグラスピー豆の単独過剰摂取による運動疾患である。我々が開発したニューロラチリズムモデルラットは、豆の神経毒β-ODAPの連続末梢投与によって後肢対麻痺を発症し、アダルトでは腰髄・仙髄の運動神経(MN)が約4割まで脱落する。今回投与初期の麻痺を発症する時期に、責任部位である脊髄運動神経はすでにネクローシス様の形態変化を示すことがわかった。同時にグリオーシス、IL-6ならびにTNF-αのmRNAレベルの有意な上昇が検出された。一方、血管の生存維持に重要なVEGF receptor(R)-2についてはタンパク質とは逆にmRNAが上昇しており、血管透過性にかかわる諸因子は不変だった。従って神経毒β-ODAP投与によって生ずる脊髄での炎症性変化とVEGFR-2プロセシングの異常が明らかとなった。一方、β-ODAPのMN毒性機構についても検討した。運動神経培養株NSC34において、含硫アミノ酸およびグルタチオン欠乏にすると毒性が増加する。この時Transient receptor potential(TRP)チャネル2および7のmRNA発現が上昇していた。TRPM2および7を薬理学的に抑えるとβ-ODAPの毒性も有意に低下した。また、モデル動物脊髄においても、麻痺発症期の脊髄下部でTRPM7のmRNAが有意に上昇していた。以上の知見から本疾患の病態のメカニズムとして、豆由来の含硫アミノ酸の低下による酸化ストレス条件下にβ-ODAPが作用すると、TRPMチャネル開口を介したCa2+-オーバーロードによりMN細胞死がひきおこされると考えられた。また観察された炎症像から、β-ODAPは同時にMNを養う脳・脊髄の血管系ならびに(もしくは)周辺グリアに対しても何らかの未解明の影響を与え、毒性増幅が起こると予想された。今後これを明らかにしたい。
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