2011 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロラチリズムモデルラットにおける酸化ストレス運動神経細胞死の毒性機構
Project/Area Number |
22590088
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
草間 國子 日本大学, 薬学部, 教授 (10130436)
|
Keywords | 運動神経 / 運動疾患 / 血管障害 / 疾患モデル / 酸化ストレス |
Research Abstract |
運動神経疾患ニューロラチリズムの発症機序としての運動神経細胞死のメカニズムについて検討した。平成23年度の実施計画【運動神経における酸化ストレスとCa上昇の接点分子としてのtransient receptor potential channe1(TRP)分子種を解明する】に関しては以下の展開があった。まず、酸化ストレス応答性のあるTRPM2およTRPM7について其々の阻害剤フルフェナム酸およびMK-886について、株化運動神経様細胞NSC34においてL-β-ODAPの引き起こすCa^<2+>に対する作用をFluo-4を用いたCa^<2+>イメージングで見たところ、両者とも有意な阻害作用を示した。これらの物質はL-β-ODAPによるこの細胞の生存性低下も部分的に軽減した。このCa^<2+>流入はTRPM2をRNAi法で低下させると抑制された(TRMP7については試薬未入手)。以上の結果から、L-β-ODAP毒性の少なくとも一部は酸化ストレスを介したこれらのチャネル経由のCa^<2+>流入であることが推定された。次に、平成22年度に一部を明らかにした【出血にかかわる因子の解明(1)脊髄前部の血管周辺の構造的特徴を明らかにする】に関して、病態組織学的に解析した。脊髄下部前角側に起こる出血について縦断標本でみると、出血部位に一致した運動神経のSMI-32抗体(非リン酸化ニューロフィラメントを認識)の染色性の低下、その付近を中心とした血管様構造におけるTUNEL染色陽性像、周辺のグリオーシス等が見られた。一方、L-β-ODAPはHUVEC細胞に対して、直接の細胞毒性を示した。これらのことは、原因物質L-β-ODAPの引き起こす脊髄前角の出血の背景として血管内皮そのものの細胞死が引き起こされ、その結果起こる透過性変化により脊髄下部に本物質の濃度上昇が起こり、それに続いて運動神経でのCa^<2+>流入、酸化ストレス、TRPM2および7の発現上昇ならびに過剰興奮(Ca^<2+>流入増大)という新規の脊髄運動神経毒性メカニズムが予想された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化ストレスとCa^<2+>上昇、TRPチャネルというつながりは予想を通りに進展し、本疾患の新たな一面が解明できた。一方、飼育条件において含硫アミノ酸を変化させて、in vivoで酸化ストレスを引き起こさせ、モデル動物の出現頻度の変動を見るという課題(H22~23年度)については、動物飼育における倫理審査に耐える研究体制をとるための、協力人員の確保ができなかったことから実行できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ニューロラチリズムの病態解明に関して、脊髄運動神経の本物質による特異的な毒性は酸化ストレスが重要であり、その状況に強く影響を受けるTRPチャネルの遺伝子発現の上昇と活性化を伴うことが判明した。このことから、その変化の過程における詳細な情報伝達メカニズムをまずは明らかにすることがin vivoの検討に先立って重要であると考えられた。したがって、細胞を使ってその機序を解明することを優先し、in vivoの「実験的治療」は後半の残った時間を充てるという優先順位をつけることに方針を変更する。この成果は本疾患に限らず、他の運動神経疾患につながると推定される。
|
Research Products
(5 results)