2011 Fiscal Year Annual Research Report
全般てんかんにおけるSUMO化修飾を介したタンパク質安定化機構の役割に関する研究
Project/Area Number |
22590095
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
渡邊 正知 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (30306203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 康一 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (30291149)
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Keywords | 全般てんかん / 一酸化窒素(NO) / SUMO / ペンチレンテトラゾール |
Research Abstract |
ペンチレンテトラゾ-ル(PTZ)誘発全般てんかんモデルでは、フリーラジカルの一種である一酸化窒素(NO)の過剰発生が痙攣発作誘発・獲得の一因となると考えられている。そこで本研究では、過剰なNO発生部位をその病巣とし、また過剰なNO発生に関連するタンパク質安定化(機能)異常をてんかん発症のメカニズムとしてそれぞれ位置付け、全般てんかん発作におけるそれらの役割を解明することを目的とする。今年度は以下を明らかにした。 (1)全般てんかん発作の病巣を明らかにするために、PTZ投与時に発生する脳内NO量をex vivo x-band EPRにて直接測定し、各種全般発作・部分発作治療薬の抗痙攣作用との相関関係を検討した。PTZ誘発痙攣には二層性があり、視床皮質回路の異常興奮を伴うNO非依存的な非痙攣性(軽微な痙攣を含む)発作と、大脳皮質・海馬・小脳全ての部位での異常興奮を伴うNO依存的な痙攣性発作(激しい間代痙攣)とから成ることが示唆された。また脳各部位におけるNO発生量は、痙攣の持続時間ではなく重症度を制御していることが明らかとなった。この様に、全般てんかん発作の病巣を特徴づける重要な知見が得られた。 (2)我々が新たに見出した神経型NO合成酵素(nNOS)のSUMO-1修飾の機能を明らかにするために、inv itroにてタンパク質安定性制御機構及び酵素活性への影響を検討したが、これまでのところ明確な関与は認められていない。現在、痙攣発作発症との関与を検討するためにinv ivoにて検討中である。 (3)過剰なNO発生に関連する機能異常分子を同定にするために、脳機能異常を時空間的にMRIにて評価したところ、PTZ誘発痙攣発作時および痙攣獲得時のNO過剰発生部位において脳血液関門(BBB)の破綻が認められた。全般てんかん発症に関与する原因分子解明において、BBBの破綻が新たな指標となることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は二つの目的を掲げた。一つ目の「痙攣を惹起する病巣の特定」に関しては、当初の目的にほぼ達した。一方、二つ目の「痙攣を誘発するNOを産生するnNOSのSUMO-1修飾の機能解析」に関しては想定した結果が得られず、痙攣発作とタンパク質安定化との関連性は未だ不明である。しかし、新たな解析指標(痙攣に伴うBBB破綻)を見出した。各結果には差があるものの全体として当初の目的達成に向け着実に進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では今後、これまでの知見を基盤とし、SUMO化修飾を介したタンパク質機能制御異常と痙攣発作との直接的因果関係を明らかにすることが重要である。そこで、痙攣を惹起する過剰NOに起因するストレスに着目し、SUMO化修飾および分子シャペロンの機能異常解析から、全般てんかん発作におけるそれらの関与を明らかにする。 また、これまでに痙攣発作に関与する脳機能異常としてBBBの破綻を見出した。近年、BBBの破綻は痙攣発作増悪化との関連性が指摘されている。今後、NOストレス-BBBの破綻-痙攣発作増悪化の三者の因果関係を解析し、全般てんかん発症の原因分子確立に向けた新たな基盤的知見を整備する。
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