2010 Fiscal Year Annual Research Report
MRI診断への応用を目指した連結官能基付き炭素鎖分岐を有するDTPAの簡便合成
Project/Area Number |
22590101
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
根本 尚夫 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30208293)
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Keywords | MRI / DTPA / Stevens転位 / 重金属キレート / 非侵襲診断 |
Research Abstract |
非侵襲診断剤として広く普及しているMRI造影剤の性能を超える新たな診断剤を創出を目的として、ガドリニウムイオン(Gd(III))のキレート能を有するジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体合成の研究を行った。DTPAのペンタエチルエステルを臭化アリルで処理してアンモニウム塩を形成させた後、過剰の臭化アリルを除いてから炭酸カリウムを塩基として加えることで、DTPA骨格中央のエステル部のα位にアリル基が導入された化合物を63%の化学収率、93%の選択性で得る事に成功した。この反応は30~50グラムスケールでの再現性が確認できた。さらに、得られたアリル化誘導体は総収率は80~90%で溝呂木-Heck反応を用いてヨードベンゼン誘導体を反応させることで、更なる連結を容易に行える官能基を持たせた誘導体合成に成功した。アリル化反応の機構は、Stevens転位反応で進行したものと考えられる。なお、既存のStevens転位反応の条件、すなわちDTPAペンタエチルエステルに臭化アリルと炭酸カリウムを一気に混ぜて反応を行った場合、所望の中央のモノアリル体は20%以下の収率となり、大量の原料が残存する上で、アリル基が2つ、あるいは3つ入った副生成物が無視できない量、生成した。既存の一気反応では成し得なかった高収率・高選択性は、炭酸カリウムを別途入れる操作と途中で過剰の臭化アリルを除く操作という工夫によって達成できた。従来の技術でDTPA骨格に炭素鎖を伸ばす反応は高価な試薬を用いており低収率である。一方、本研究で達成した技術は低コスト・操作の簡便性・大量スケールの高再現性という特長を有し、今後MRI診断剤の製造におけるコストダウンに大いに貢献できると考えられる。
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Research Products
(9 results)