2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来がん化学療法で利用可能なパクリタキセルの有害事象予測因子の探索
Project/Area Number |
22590138
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
賀川 義之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90397505)
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Keywords | パクリタキセル / がん化学療法 / 好中球減少症 |
Research Abstract |
がん化学療法においては、抗がん剤投与に伴う有害事象が用量規制因子であり、がんの進展ではなく、抗がん剤投与による汎血球減少などの有害事象によって死に至る場合もある。本研究では、タキサン系抗がん剤であるパクリタキセルが好中球減少症などの有害事象を引き起こす因子を、外来がん化学療法の普及を考慮した上で明らかにし、有害事象の発現を防止・軽減することを目的としている。探索する因子のうち、薬物動態パラメータは外来での治療で入手可能なものを優先して用いる。すなわち、本研究ではパクリタキセル投与後の薬物血中濃度、薬物血中濃度-曲線下面積、薬物代謝に関与する分子種および排泄に関与するP糖タンパク質の遺伝子多型、併用薬などの情報を単独あるいは組み合わせて統計学的手法を用い評価し、好中球減少や神経障害等の有害事象を引き起こす因子を多面的に解析する。 血液中パクリタキセル濃度の測定に逆相系セミミクロ高速液体クロマトグラフィーを用いる方法を既に開発している。さらにより低濃度の血中濃度測定に対応するため、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を用いた測定系を新たに構築した。すなわち、C18逆相系カラム、内部標準物質にドセタキセルを用い、エレクトロスプレーイオン化法によりパクリタキセルの質量電荷比(m/z)854→509、内部標準物質ドセタキセルのm/z808→528を検出することにより、臨床検体で数ng/mL以下の検出感度を達成している。さらに、血液中のパクリタキセルの効果的な抽出法を開発するため、液-液抽出法と固相抽出法を比較検討し、Oasis-HLBを用いる固相抽出法により、95%以上の高い回収率が得られた。血漿検体にパクリタキセルとドセタキセルを添加した試料を用いた検量線では、1ng/mLから1000ng/mLの範囲内で重相関係数r^2=0,9999の良好な相関が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高速液体クロマトグラブ質量分析計を用いる薬物血中濃度測定において、最適な固相抽出法の確立に時間を要した。固相カラム、抽出溶媒、抽出時間を工夫することで、高感度の検出を維持しながら、パクリタキセルおよびドセタキセルの高い回収率を得ることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
既に開発したパクリタキセルの薬物血中濃度測定法を用いて、パクリタキセルを投与されているがん患者の血漿中総濃度および蛋白遊離型濃度を測定する。また、パクリタキセルの代謝物である6-αヒドロキシパクリタキセルの血漿中濃度測定法を確立し、パクリタキセルとの同時高感度測定を実施する。さらに、パクリタキセルの体内動態や有害事象発現に影響する遺伝子多型測定を検討し、薬物血中濃度と併せて多面的に解析する。臨床検体でのパクリタキセルおよび代謝物の血中濃度測定と遺伝子多型などの結果をもとに、多面的解析を実施し、外来がん化学療法時の有害事象と薬物動態との関係を明らかにすることで、がん化学療法の効果を維持した上でより安全性を高める。
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