2011 Fiscal Year Annual Research Report
シトクロムP450(CYP)酵素を介したロサルタンによるアラキドン酸代謝阻害
Project/Area Number |
22590141
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Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
戸田 貴大 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (00254706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪爪 信夫 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (10191892)
早川 達 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50337044)
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Keywords | 薬堂 / 酵素 / ゲノム / 代謝 / 薬剤堂 |
Research Abstract |
アラキドン酸を代謝するシトクロムP450(CYP)酵素のうち、代謝物のエポキシエイコサトリエン酸類(EETs)をもっとも多く生成するCYP2C9*1のリコンビナント酵素(rCYP2C9*1)を用いて、14,15-EET生成に対するロサルタンの阻害形式および阻害定数を求めた。その結果、阻害形式は競合的阻害、阻害定数は10.5μMであることが明らかとなった。 CYP2C9*1の遺伝子多型であるCYP2C9*3のリコンビナント酵素(rCYP2C9*3)を用いて、アラキドン酸の代謝実験を行ったところ、EETsの生成速度はrCYP2C9*1のおよそ8分の1であることが明らかとなった。ロサルタンはrCYP2C9*3においてもアラキドン酸の代謝を阻害したことから、CYP2C9*3を持つ患者では、もともとのEETs生成量が少ない上にロサルタンによりさらにその生成が阻害され、心血管系イベントが生じやすくなる可能性が示唆された。 ロサルタン以外の各種アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBs)を用いて、rCYP2C9*1によりアラキドン酸代謝の阻害を検討した。その結果、ARBsによって阻害の強度は異なることが明らかとなった。特に阻害の強かったテルミサルタン、ロサルタンにおいては、EETsによる心保護作用が減弱することで、副作用である心血管系イベントが増加する可能性が示唆された。 さらに、ロサルタンの活性代謝物E-3174の添加により、リコンビナント酵素系において濃度依存的にアラキドン酸の代謝が阻害されることを見出した。これは、ロサルタンによるCYP酵素阻害は、ロサルタンのみならずE-3174による影響も考慮しなくてはならないことを示唆している。 現在、これらの結果について論文投稿の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って実験を進めているが、計画以外の実験が追加となったことと、論文投稿が予定よりも遅れていることから、「(2)おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
論文投稿のため、確立したLC-MS/MSによる各種エイコサノイド類同時定量法について追加実験を行う。 リコンビナント酵素rCYP2C8における、アラキドン酸代謝に対するロサルタンの阻害形式、阻害定数等を求める。カロリンスカ研究所においてすでに遺伝子型を調査済みのヒト肝ミクロソーム(CYP2C9*1/*1、CYP2C9*1/*2、CYP2C9*1/*3、CYP2C9*2/*2およびCYP2C8*1/*1、CYP2C*1/*3、CYP2C8*3/*3)、を用いて、ロサルタンによるアラキドン酸代謝阻害活性の遺伝多型差を検討する。 ロサルタン以外のアンジオテンシンII受容体拮抗薬およびロサルタン代謝物のE-3174についても、ロサルタンと同様に、リコンビナント酵素を用いてアラキドン酸代謝における阻害の有無について検討する。すでにCYP2C9については実験済である。阻害が認められた組み合わせについては、その阻害形式、阻害定数等を求める。
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