2011 Fiscal Year Annual Research Report
スーパー抗原刺激したヒトリンパ球の増殖と制御性T細胞動態に及ぼす各種抗菌薬の効果
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22590145
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
平野 俊彦 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90173252)
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Keywords | 細菌由来スーパー抗原 / 末梢血単核細胞(PBMC) / 制御性T細胞(T reg) / MAPK / マクロライド系抗生物質 / 亜ヒ酸 / ビタミンK / 抗微生物薬 |
Research Abstract |
細菌由来スーパー抗原やT細胞マイトゲンで刺激したヒト末梢血単核細胞(PBMC)の増殖や制御性T細胞(Treg)動態に及ぼす、種々の抗菌薬や亜ヒ酸(As203)の効果を検討した。前年度までに、マクロライド系抗生物質のロキシスロマイシンがPBMCの増殖やサイトカイン産生に対して抑制効果を示すこと、およびAs203がPBMC中の制御性T(Treg)細胞率を減少させることを明らかとした。平成23年度はまず、マクロライド系抗生物質の免疫抑制作用機序をより詳細に知るべく、ロキシスロマイシンがPBMC中のTreg細胞動態やMAPK活性に及ぼす効果を検討した。その結果、ロキシスロマイシンは、スーパー抗原刺激したPBMCにおけるTreg細胞の比率を変えるよりむしろ、同細胞のMAPKであるJNKの活性を抑制することにより、PBMC増殖を抑えるものと結論した。次に、As203が活性化PBMC中のTreg細胞動態に及ぼす効果を、PBMC培養の継時的に検討した。0.5-3.0μMのAs203は、PBMC中のCD4陽性細胞におけるTreg細胞の割合を変えなかったが、5.0μMのAs203は48時間処理によりPBMCにおけるCD4陽性細胞中のTregの割合を有意に減少させた(p<0.01)。一方5.0μMのAs203は、72時間処理によりPBMCにおけるCD4陽性細胞中のTreg細胞の割合を有意に増加させた(p<0.05)。このように、As203のTreg細胞動態に及ぼす効果は作用時間に依存しており、作用時間が比較的短い場合はCD4陽性細胞中のTreg細胞の割合を減少させ、一方長い場合は逆にTreg細胞を増加させるものと考えられた。この他、19種抗微生物薬やビタミンKがPBMC増殖に及ぼす効果などを検討し、そのうちの幾つかに比較的強い免疫抑制性の作用があることを、予備的知見から見い出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の当初の目標であった、マクロライド系抗生物質と亜ヒ酸がPBMC中のTreg細胞の割合に及ぼす効果をより詳細に確認できた。一方、脂溶性ビタミンや他の抗微生物薬がPBMCの増殖やTreg細胞に及ぼす効果の検討はまだ不十分であり、平成24年度の課題である。更に、全身性エリテマトーデス患者やネフローゼ患者由来のPBMCの免疫抑制薬感受性を調べ、感受性低下の成因を検討する研究は継続して行っているが、当該年度では10例程度の症例を検討したにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンやマクロライド系抗生物質以外の抗微生物薬やオリゴペプチドが、PBMCの増殖やTreg細胞動態に及ぼす効果を検討する方針である。更に、全身性エリテマトーデス患者やネフローゼ患者由来のPBMCの免疫抑制薬感受性を症例を増やして検討し、これらの疾患における免疫抑制薬感受性低下の成因に関する一定の結論を得る。特に、これらの疾患患者のPBMCにおける、Treg細胞動態と免疫抑制薬の治療効果との関連を探る。なお本研究計画は、既に本学倫理委員会の承認を得ている。
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