2011 Fiscal Year Annual Research Report
老化を基礎とする疾患の発症・進展の予防を目的とした薬物の脳内移行特性の解明と応用
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22590149
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 豊史 日本大学, 薬学部, 准教授 (20267115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深水 啓朗 日本大学, 薬学部, 講師 (20366628)
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Keywords | 薬学 / 血液脳関門 / パーキンソン病 / アマンタジン |
Research Abstract |
アマンタジンは,交通事故などによる外傷性脳損傷後の意識障害患者の機能的障害の回復を早め,パーキンソン症候群,認知症などに対する改善作用を有することから,老化の進展予防の視点からアマンタジンの血液脳関門輸送についてin vitroならびにin vivoで検討した. 1.脳への取り込み:アマンタジンのウシ脳毛細血管内皮細胞への取り込みは,低温で抑制され,薬物濃度依存的に低下した.典型的な有機アニオン輸送系(OATs)の阻害剤あるいは内因性アミノ酸はアマンタジンの細胞内取り込みに影響を及ぼさなかった,一方,有機カチオン輸送系(OCTs)の基質のなかで1nMの1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)とTEAだけがアマンタジンの取り込みを約50%阻害した. 2,脳からの排出;アマンタジンの約50%はラット大脳内微量注入後60分に脳から比較的緩やかに消失していることがわかった,その消失は典型的なOATsの阻害剤により抑制されなかった,これに対して,OCTsの基質のなかで20mMのMPP^+だけがアマンタジンの脳からの排出を有意に阻害した. 以上のことから,アマンタジンの血液脳関門輸送にはMPP^+に感受性のあるOCTsの一部が取り込みや排出に働いている可能性が明らかになった,MPP^+はパーキンソン病関連神経毒として,神経伝達物質再取り込み機構により細胞膜上のドパミントランスポーターを介して神経終末に取り込まれ,ドパミン神経を選択的に細胞死させる,またアマンタジンはOCT2の基質薬物として尿細管分泌されることが知られている.したがって,アマンタジンの血液脳関門でのOCTs介在輸送機構を明らかにすることは,外傷性脳障害やパーキンソン病のような病態時にその輸送がどのような変動を示すかを把握することができ,疾患の進展予防のための有効な薬物治療に応用につながる知見となると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
糖化最終産物(AGE)が種々の老化の原因であり,アンチエイジングにとって重要な要因である.AGEの蓄積を予防するといわれている薬物が探索できていない.そのためため,生体内あるいは培養細胞でのAGEに及ぼす薬物の脳内移行性の調査が進展してないのが現状である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,来年度で最終年度を迎える.糖化最終産物(AGE)が種々の老化の原因であり,AGEの蓄積を予防する薬物が探索できていない現状から,今後はアルツハイマー病やパーキンソン病などの進展を遅延させる薬物について,脳への移行性やその応用に関する実験を進める.老化を基礎とする疾患の発症・進展の予防を目的とした物質として,活性酸素を除去する抗酸化作用を示すポリフェノール類縁化合物の脳への移行性や経皮吸収を試みる予定である.
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Research Products
(6 results)