2011 Fiscal Year Annual Research Report
疾患による免疫系の活性化が肝薬物代謝酵素の機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
22590159
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
九川 文彦 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90205063)
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Keywords | 肝薬物代謝酵素 / 免疫系不活化 / 細菌感染 / I型アレルギー / 医療薬剤学 / 薬物動態学 |
Research Abstract |
本研究は、感染症や炎症による免疫系の不活化が薬物代謝能に及ぼす影響の解明を目的としている。平成23年度は、マウスの薬物代謝酵素遺伝子群の発現制御に、炎症性サイトカインにおけるシグナル伝達の最上流に位置するNF-κBが関与している可能性を考え、NF-κBと相互作用する転写因子の同定を目的としたGST-pull down系の構築を、研究の主眼とした。NF-κ6は4つのsubunitから構成されているが、そのなかでも最大のP65 subunitに結合することが期待される核内転写因子の探索が具体的な研究目標である。すなわち、GE社製のpGEX vectorシリーズを基盤に、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合p65発現ベクターを作成した(pGEX-6P-1/P65)。融合タンパク質は大腸菌のシステムを使って作成したが、GSTおよびP65抗体のいずれを使っても、P65をbaitとした正常な融合タンパク質の生成が確認された。 次の重要なステップは、マウス肝細胞の核抽出画分からP65に結合する未知の因子(恐らくは、転写因子と考えられる)を生成することである。この実験には、2次元電気泳動システムを使い、かつタンパク質同定用として、LC-Massシステムを使う必要がある。そこで、京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻の植田充美教授と共同研究を開始した。 一方、上記プロテオミクス実験計画のパイロット実験として、1次元電気泳動とwestern blottingを組合せたシステムを用い、P65 baitに結合するタンパク質の探索を行った。これは、核内でNF-κB,P65 subunitと結合することが知られているI-κBの抗体を用いた対照実験である。実験にはヒト肝臓がん由来培養細胞株のHep G2細胞を用いたが、P65 baitへのI-κBの結合が確認された。 以上の結果より、p65をbaitとしたGST-pull down系の構築と、Hep G2細胞を用いた対照実験が完了し、一連の研究計画は順調に進行していると判断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の山場ともいえる、GST-pull down systemの構築が完了したこと。ヒト培養肝細胞Hep G2を使った対照実験が成功していること。今後のプロテオミクス実験について、新たな共同研究体制が構築されたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究目標は、本年度に確立されたGST-pull down systemを使って、マウス肝臓からNF-κBの転写を制御するタンパク質様因子を生成することである。タンパク質性因子はLC-Massを使って同定するので、その性質の特定にかかる時間は比較的短時間であることが期待される。候補は複数同定されると思われるが、直ちにRNA干渉実験を行うことにより(平成25年度の予定)、なにが「本当の」p65と相互作用する因子かが明らかになるはずである。 本科学研究費助成金の直接の研究目的ではないが、将来的には「ヒト」を対象にした研究に発展させたい。そこで、兵庫医科大学病院リウマチ・膠原病科との共同研究を開始した。すなわち、慢性リュウマチ疾患に罹患している患者にアンケート調査を行い、新たな疾患に罹患した場合抗リウマチ薬の「効き」がどうなるかを主観的に答えてもらうものである。将来の臨床研究へのヒントが得られることを期待している。
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Research Products
(1 results)