2013 Fiscal Year Annual Research Report
疾患による免疫系の活性化が肝薬物代謝酵素の機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
22590159
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
九川 文彦 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90205063)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 肝薬物代謝酵素 / 免疫系賦活化 / 細菌感染 / 1型アレルギー / miRNA / 薬物動態学 / 医療薬学 |
Research Abstract |
本研究課題は、感染症の罹患の結果、もしくはアレルギー反応の原因となる免疫系シグナル伝達システムの活性化(不活性化)が、肝薬物代謝酵素の発現・活性変動に及ぼすメカニズムの解明を目的としたものである。実験動物にマウスを用い、LPS投与により細菌感染の罹患をシミュレートし、オボアルブミンによるアナフィラキシーショックをアレルギー反応のモデルに用いた。具体的には、CYP3A11の活性化は細菌感染時(LPS投与系)では起こるが、アナフィラキシーショック系では起こらないメカニズムを、免疫系シグナル伝達因子の要とも言えるNF-kappa Bに結合する未知の因子によるものとの仮説を証明することを目的としている。一方、同じCYP系でも、CYP2B10の活性変動はLPS投与系とアナフィラキシー系の間では観測されていない。この意味もあわせて理解したい。 平成25年度の研究では、NF-kappa Bサブユニットのうち、p65 subunitに結合する未知因子を免疫沈降法で確認したが、LC-Masを使ったショットガンプロテオミクスにより、アナフィラキシー系においてのみNF-kappa Bに結合する因子を明らかにした。これはBAG6として報告されているシャペロン様タンパク質であった。 このタンパク質が、アレルギー反応のような免疫系シグナル伝達に関与している、という報告は、IL-17との相互作用などわずかである。このタンパク質の役割を論じる上で、現在はBAG6を制御するmiRNAに焦点をおき、そのメカニズムの解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は本課題研究計画4年目であり、LPS投与系、アナフィラキシーショック系の両者のサイトカインシグナル伝達系路の「差異」となる、NF-kappa B結合タンパク質を探すことが主眼であった。また、ELISAシステムなどの系を用いてその結合タンパク質の定量系を確立し、そのタンパク質が、同じ免疫系に対する疾患ではあるが、細菌感染と1型アレルギーという異なる病態に対する一種の発症サロゲートマーカーになりうるかの可能性を検討することであった。 現在、BAG6というタンパク質の同定には成功しているが、その定量システムの開発は後回しになっている。これは、BAG6の発現を制御するmiRNAの同定と定量を優先事項としているからである。そもそも、当初の計画では未知因子が発見された場合(結果的に、BAG6だと同定できた)、RNA干渉の手法を用いてその機能を明らかにすることを目的としていた。しかし、昨今、プロテオミクスとmiRNAの融合は、シグナル伝達を制御するような生理活性タンパク質の制御メカニズムの理解に不可欠の研究分野となっている。 そこで、実験的にも定量化が容易で、かつweb上でのデータベースからの情報の入手が容易なmiRNAを主眼においたbioinformaticsの実験を優先させているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究課題の最終年度である。アナフィラキシー系においてのみBAG6がNF-kappa B, p65 subunitに結合し、CYP3A11の転写を抑制することが明らかになったが、その「上位」のメカニズムを明らかにすることで、この現象の、免疫系シグナル伝達機構における意義を明らかにしたい。 それには、2つのアプローチがある。1つ目は上述したようにBAG6の発現を制御するmiRNAに着目することである。当初の研究計画では、未知タンパク質の直接定量系を構築し、もってアナフィラキシー疾患の発症に関わるサロゲートマーカーとすることを計画していた。しかし、BAG6の発現制御を行うmiRNA群が明らかになれば、タンパク質の定量よりは遥かに実験が容易であり、将来のヒトを対象にした臨床応用への端緒が開かれる。 2つ目はBAG6をbaitにして行う免疫沈降実験である。BAG6はシャペロンタンパク質としての存在が有名であるので、思わぬ「シグナルカスケードネットワーク」が明らかになり、免疫疾患によって異なるシグナルカスケードの存在が明らかになる可能性がある。 なお、関連派生実験として、miRNAによるアレルギー疾患の制御については、ヒト関節リウマチに関係してその増減が報告されているmiRNAを抽出し、そのターゲットとなるmRNAの組み合わせにより、関節リウマチのどの経路が重要であるかを明らかにできるアルゴリズムを開発した(森家 望、中西祐貴、渡辺麻梨菜、九川文彦、日本薬学会第134年会、平成26年3月、熊本)。
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Research Products
(2 results)