2010 Fiscal Year Annual Research Report
PACAPを介した精子-卵丘細胞の相互作用と受精における役割の解明
Project/Area Number |
22590170
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
谷井 一郎 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (40207171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒舘 忠 富山大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教 (30303233)
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Keywords | 受精 / 卵丘細胞 / 精子運動能 / 神経ペプチド / PACAP / 先体反応 |
Research Abstract |
PACAPはセクレチン/グルカゴン/VIPファミリーに属する神経ペプチドで,様々な細胞に作用して細胞の増殖,分化,分泌に影響する。これまでにマウス精子細胞の先体にはPACAPが存在することが報告されているが,成熟した精子細胞あるいは精巣上体精子ではその存在が確認されていない。そのために先体内に存在するPACAPの役割は未解明であった。本研究では,精子先体にPACAPが存在すること,また卵周囲を取り巻く卵丘細胞にはPACAP特異的受容体PAC1が発現していることを示した。そこでPACAPの受精における役割について調べ,以下の結果を得た。マウス体外受精実験系にPACAPを添加すると,受精率がPACAP濃度依存的に上昇した。卵丘細胞をPACAP処理して得た培地は,精子頭部の振幅を大きくする,いわゆるハイパーアクチベーション様の運動を活発化した。また,この培地で精子を処理すると透明帯によって引き起こされる先体反応率が上昇した。これらの結果から,精子先体のPACAPは卵丘細胞通過中に先体から漏れ出し,卵丘細胞に作用して,卵丘細胞はこれに応答して,精子の運動能と先体反応率を上昇させる作用を持つ因子を放出すると考えられた。これまで受精において卵丘細胞は精子通過のバリアとして機能が重視されてきたが,本研究は卵丘細胞が受精の促進に働いていることを示し,そのメカニズムには,PACAPを介した精子-卵丘細胞相互作用が関与していることを明らかにした。
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