2010 Fiscal Year Annual Research Report
未分化細胞と癌細胞に特有の栄養素輸送体の同定と医学的応用
Project/Area Number |
22590184
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩永 敏彦 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10160128)
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Keywords | モノカルボン酸 / 輸送体 / 乳酸 / グルコース輸送体 / MCT / 未分化細胞 |
Research Abstract |
細胞のエネルギー源としてのモノカルボン酸(短鎖脂肪酸、乳酸、ケトン体など)の重要性を明らかにするために、特異的な輸送体であるMCTの発現を生殖器と未分化増殖細胞で検索した。雌マウスの生殖器では、卵母細胞の細胞膜以外に卵母細胞を取り囲む顆粒層細胞および卵管の線毛細胞がMCT1を強く発現していた。グルコース輸送体(GLUTs)は卵管上皮でも発現しているが、その強さと分泌域はMCTに比べると弱く、局所的なものであった。卵母細胞、受精卵および初期胚はグルコースよりもピルビン酸や乳酸を主な栄養源にしている事実とよく符合した染色結果であった。卵管のMCT1含有線毛細胞に隣接してアルドラーゼ活性の強い無線毛細胞が多いことから、局所での乳酸シャトルの成立が考えられた。ついで、未分化増殖細胞が常に存在する皮膚、消化管、骨髄での検討を加えた。皮膚では、表皮や毛の成長点と目される毛包隆起に限局してMCT1の強い免疫反応が得られた。小腸では、上皮細胞の増殖部位である陰窩上部の未分化細胞群がMCT1を強く発現するが、絨毛へ向かうにつれその反応は弱くなった。骨髄中の造血細胞はMCT1を発現するが、より未分化(前段階)の造血細胞が存在するとされる海綿状骨の領域ではさらに強い免疫反応が得られた。こういった増殖部位ではグルコース輸送体の発現はほとんど見られなかった。原始的な細胞および未分化細胞は、低酸素の状態に置かれており、グルコースを効率よく利用することはできない。低酸素状態でも産生され得るモノカルボン酸を輸送するMCTが強く発現していることから、グルコースの代替えエネルギーとして、モノカルボン酸が利用されることを本研究は強く示唆したと言える。今後は、癌細胞を中心に検索の範囲を広げる予定である。
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Research Products
(3 results)