2011 Fiscal Year Annual Research Report
未分化細胞と癌細胞に特有の栄養素輸送体の同定と医学的応用
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22590184
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩永 敏彦 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10160128)
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Keywords | モノカルボン酸 / グルコース / MCT |
Research Abstract |
細胞のエネルギー源としてのモノカルボン酸(短鎖脂肪酸、乳酸、ケトン体など)の重要性を明らかにするために、特異的な輸送体であるMCTの発現をおもに生殖器系で解析した。今年度はとくに、精巣と精子に注目した。精子は独立したマイクロマシンであり、激しい運動をすること、細胞小器官の種類が少なく単純であることを特徴とする。精巣内の未熟精子の鞭毛では、主部に選択的にMCT2が発現・存在するが、精巣上体や精管内の成熟精子ではMCT2の発現が中節(中間部)に完全に移動していた。一方、精子の鞭毛の全体には、グルコース輸送体であるGLUT3が発現がしていた。従って、精子はグルコースとモノカルボン酸(おそらく、乳酸)を栄養素として取り込むことができる。乳酸はメスの膣、卵管内に豊富に含まれているので、MCT2の発現は精子の運動には都合がよい。鞭毛主部から中節へのMCT2の移動の説明は難しいが、成熟、ステージに伴いこれほど顕著に変化する例は珍しいといえ、今後の機序解明が待たれる。 精巣内では、精祖細胞にMCTlが特異的に発現しているが、グルコース輸送体は発現していなかった。 従って、精祖細胞はモノカルボン酸を主要な栄養源としている。未分化幹細胞は解糖系でのみエネルギーを産生している事実と関係があるようだ。興味深いことに、GLUT3は精祖細胞には発現しないが、精母細胞以降のステージでは強く発現する。血液精巣関門は、精祖細胞と精母細胞の間に構築されているが、グルコースはこの関門を通過できるとされているので、精母細胞以降のステージではグルコースを栄養源にしているのであろう。 MCT1は、精祖細胞以外では、精子の頭部(おそらく先体)に発現していた。この意味するところは、今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿った研究が遂行され、大きな問題は生じなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定とおり遂行する。精子での発現は、電子顕微鏡レベルで行う。癌組織については、予備実験をすでに済ませて、十分達成可能である。
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Research Products
(3 results)