2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖情報の発現様式と動的変化に関する組織細胞化学的研究
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22590193
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
川上 速人 杏林大学, 医学部, 教授 (30146542)
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Keywords | 糖鎖 / レクチン / 組織細胞化学 / 糖脂質 / 血管内皮細胞 / 癌細胞 / 組織アレイ / 糖尿病 |
Research Abstract |
正常ヒト各臓器の組織アレイやマウス各種組織標本に対し、50種類以上のレクチンによる染色を施すことにより、臓器ごとに異なるレクチン染色パターンが実質細胞のみならず血管内皮細胞でも確認された。血管内皮細胞表面糖鎖の臓器ごとの差異を解析する端緒となるのみならず、癌転移の臓器特異性を解明する上でも有効となるデータを得ることができた。また糖鎖情報のもう一方の構成要素である糖脂質の局在解析実験として、各種糖脂質特異的モノクローナル抗体を用いて、正常ラット腎臓における糖脂質の局在を、糖尿病発症GKラットの腎臓と比較した。正常ラットでは、糸球体の足細胞の特に基底膜に面する足突起細胞膜に抗Gb3抗体陽性反応が認められた。一方GKラットにおいては、足突起細胞膜のみならず内皮細胞細胞膜、糸球体基底膜に抗Gb3陽性域が拡大した。一方、抗GDlaなど各種ガングリオシド特異抗体は、糸球体基底膜にも内皮細胞にも反応は認められず、足細胞の細胞内膜系の陽性反応が特にGKラットにおいて認められた。糖脂質の局在は、糸球体における濾過機能を解明するうえで有用な手がかりになると考えられた。更にラット小腸組織での糖脂質局在を検討すると、吸収上皮細胞の側底部細胞膜では抗Gb3の、頂部細胞膜では抗GM1の特異的局在が確認された。これらの糖脂質が各種病原性細菌の受容体となっていることを考え合わせると、小腸上皮の機能を解析する上で糖脂質の組織化学が有力な手段になるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血管内皮細胞表面の臓器特異的糖鎖分布を、組織切片のみならずin situで解析することが本研究の大きな柱の一つであるが、マウス全身灌流によるレクチン標識法は、多種類の臓器を解析するために多大の時間を要することから、未だ一部のレクチンでの解析に止まっている。この解析が終わり次第、血管内皮細胞表面糖鎖と癌細胞との相互作用をin situで解析する実験を始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス全身灌流によるレクチン標識法は、多種類の臓器をターゲットにして多種類のレクチンを適用して網羅的に解析するためにかなりの時間を要することから、とりあえず、臓器とレクチンの種類を主要なもの数種類に絞って、解析のスピードアップを図る予定である。その上で、癌細胞の血管注入により、血管内皮細胞表面糖鎖と癌細胞との相互作用をin situで解析する実験を開始予定である
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Research Products
(15 results)