2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳内ホメオスターシスにおけるミクログリア内セマフォリン信号伝達機構の役割解明
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22590195
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
湯川 和典 名城大学, 薬学部, 教授 (20301434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 謙二 名城大学, 薬学部, 助教 (80294122)
竹内 典子 名城大学, 薬学部, 助手 (80076728)
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Keywords | 細胞分化・組織形成 / セマフォリン / 精神疾患 / プレキシン / 那須-ハコラ病 |
Research Abstract |
軸索ガイダンス分子のセマフォリン(Semas)は、免疫機能の調節など多彩な作用を発揮する。セマフォリン受容体のplexin-A1が破骨細胞膜上でTrem2分子およびDAP12アダプターと情報伝達複合体を形成し破骨細胞機能を調節することが判明している。そのためplexin-A1欠損マウスは破骨細胞機能低下から大理石病を発症する。ヒトではTrem2あるいはDAP12分子の機能欠損により骨病変と統合失調症様症状から認知症に至る那須-ハコラ病を発症する。マウスにおいてもDAP12欠損で大理石病と統合失調症様行動異常やシナプス変性の所見が得られた。ミクログリア細胞膜上でplexin-A1、Trem2、DAP12の複合体形成が考えられるが、14週齢以上のplexin-A1欠損マウスでは統合失調症様行動異常が顕著となり、老齢マウス海馬でTNFアルファの増加を認めた。従って本研究では、精神疾患の発症機構解明に有用な新規知見を得るために、plexin-A1欠損マウスの脳組織を免疫組織化学法で解析を行った。その結果、生後0~1日齢のplexin-A1欠損マウスの海馬と皮質においてアポトーシス・ニューロン数とミクログリア数の減少を認めた。plexin-A1欠損によりセマフォリン信号が途絶えミクログリアの分化が障害されたために、幼若ニューロンに対するアポトーシス誘導が不全になった可能性が示唆された。一方、加齢にともないplexin-A1欠損マウス脳内に活性化ミクログリアの増加とNOS2やIL-1ベータ、IL-6等の増加を認めミクログリア過剰活性化による脳内炎症の増強が示唆された。またリポ多糖刺激で活性化した培養ミクログリア細胞にリガンド候補のSema6D添加で貧食能亢進と活性酸素種産生抑制を示唆する所見を得たため、ミクログリア機能発達におけるplexin-A1作用の解析システムを構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度研究実施計画では、plexin-A1/TREM2/DAP12情報伝達複合体の脳内リガンド同定を計画していたが、genotypingに数時間を要し生後0~1日齢のplexin-A1欠損マウスのサンプリングが困難だったために脳内リガンド同定の実験は予定より遅れている。最近は、方法改善により安定してplexin-A1欠損マウスが得られるようになっている。また、各週齢のplexin-A1欠損マウス脳における異常を検出する目的で免疫組織化学法による実験を中心に研究を進めたために脳組織内での異常は明らかにはなったが、脳の各部分や分画中に含まれるシナプス機能関連タンパク質やニューロン内信号伝達分子の活性化状態の定量・解析も遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ミクログリア分化と機能発達におけるplexin-A1の役割を明らかにするために、出生時から老齢までの各週齢の野生型とplexin-A1欠損マウス由来初代培養ミクログリア細胞に各種セマフォリンを添加し、ミクログリアの機能解析を行いplexin-A1/TREM2/DAP12情報伝達複合体の脳内リガンド同定を行う。さらに、plexin-A1欠損マウスの加齢にともなうミクログリア異常活性化のニューロンへの影響を解明するために、免疫ブロットにてシナプス機能関連タンパク質の低下について定量解析を行う。またミクログリア異常のニューロン内信号伝達への影響を解析するために、各週齢の野生型とplexin-A1欠損マウスの各脳部における種々のシグナル伝達系の活性化状態を定量・比較する。さらにミクログリア異常により誘導される神経変性を検出し定量・比較する。以上の研究計画の遂行にて得られた結果を取りまとめ学会発表と論文発表を行う。
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Research Products
(4 results)