2010 Fiscal Year Annual Research Report
TRPチャネルによる大腸イオン分泌異常機構の電気生理学的解明
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22590201
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
清水 貴浩 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40353437)
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Keywords | イオンチャネル / 大腸 / クロライドイオン / 下痢 / ワサビ |
Research Abstract |
本年度は、ラットから大腸粘膜を単離し、Ussingチャンバー法を用いた組織レベルでの短絡電流(Isc)の測定を行い、わさびの辛味成分であるアリルイソチオシアネート(AITC)がどのように分泌性下痢を誘発するのかについて検討した。大腸粘膜の漿膜側へのAITCの添加により一過性のISC上昇および膜コンダクタンスの増加が観測できた。このIsc上昇は、漿膜側へのNa^+,K^+,2Cl^-共輸送体の阻害剤であるフロセミドの投与や溶液中のCl^-を除去することにより有意に抑制された。これらの結果から、AITCが大腸粘膜からのCl^-分泌を引き起こすことが明らかとなった。次に、このAITC誘導性Isc上昇に神経系が関与しているのかを検討した。神経活動を抑制するフグ毒のテトロドトキシンを作用させたり、神経層が含まれている粘膜下層を剥ぎ取った大腸粘膜を用いたりしても、AITCはIsc上昇を引き起こしたことから、このCl^-分泌に粘膜下層の神経系の関与はないことが示唆された。これまでに大腸のCl^-分泌を引き起こす細胞外シグナルとしてアラキドン酸代謝物が知られていることから、シクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、シトクロムP450の各阻害剤の効果を検討したところ、AITC誘導性Isc上昇はシクロオキシゲナーゼ阻害剤により抑制されることが明らかとなった。さらにPGE_2受容体拮抗剤を添加したところ、AITCによるIsc増加が有意に抑制された。以上のことから、漿膜側に添加したAITCにより産生されたPGE_2がメディエーターとして大腸クリプト細胞に作用することで、Cl^-分泌を誘導していることが明らかとなった。
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